マンションでよく使われる
立体駐車場の種類と注意点
マンションでは、駐車場付置条例などに基づき、住戸数や延床面積などに対し、ある程度の駐車台数を確保する必要があります。
マンションでよく使われている立体駐車場はどのようなタイプなのでしょうか。今回はマンションで使われていることが多い立体駐車場の種類と注意点をご紹介いたします。
マンションでよく使われている立体駐車場の種類と仕組み
マンションでよく使われている駐車場の種類を3つご紹介いたします。
機械式立体駐車装置(タワー式含む)
国土交通省の平成30年度マンション総合調査結果では、マンションでよく使われている駐車場のうち約32.2%が機械式立体駐車装置です。狭い敷地に効率よく駐車台数を確保したい場合に採用されます。
自走式立体駐車場
マンションの駐車場のうち約5.3%が自走式立体駐車場です。マンションの駐車場の中では比較的少ない割合ですが、機械操作の出庫待ちがなくローメンテナンスであるため、機械式駐車装置からの建て替えを依頼される事例が増加しています。
平面式駐車場
マンションで使われている駐車場で最も大きな割合を占めているのが平面駐車場で約78%です。建設・管理コストが低い一方で、敷地スペースあたりの駐車台数が低いため、立体駐車場を増築するケースがあります。
機械式立体駐車装置と自走式立体駐車場の比較
マンションでよく利用されている機械式と自走式、2種類の駐車場のメリット・デメリットなど違いを知って、適切な駐車場を選びましょう。こちらでは先ほどご紹介した3種類の駐車場の特徴などをご紹介いたします。
機械式立体駐車装置(タワー式含む)のメリット
- 盗難やいたずらを防ぎやすい
駐車中、機械内に人が立ち入ることが少ないため、いたずらや盗難のリスクは比較的低いと言えます。 - 日光による車体塗装の褪色が起こりにくい
タワー式立体駐車場は屋根があるため、日光の影響を受けにくいメリットもあります。ただし、多段式駐車装置には屋根が付いていません。すべての車両を日光から防ぎたい場合は、タワー式駐車装置を選びましょう。 - 省スペースで駐車台数を確保できる
例えば1フロア4台分の駐車スペースがある場合、3段にすることで12台の駐車が可能です。また、運転して上階へ移動することがないため、車路やスロープの設置が不要です。このため、マンションの一角など敷地が限られている場合に採用されています。
機械式立体駐車装置のデメリット
- ランニングコストがかかる
機械式立体駐車装置は設置コストの他、メンテナンス費や部品代等の修繕費がかかります。また、メンテナンス中は入出庫が不能になるため、トラブルを防ぐための事前周知及び対応策の検討が必要です。 - 入出庫に時間がかかる
入出庫時に機械を操作して自分の車を取り出すため、比較的時間がかかります。また、出勤時間等のタイミングでは他の利用者の入出庫待ちの時間が発生することもあります。 - 災害時のリスク
機械で動くので災害時に停電があると利用できません。停電がない場合でも、大規模地震の際は、ピットの浮き上がりや傾きなど被害状況によっては稼働が難しいこともあります。
自走式立体駐車場のメリット
- 入出庫が容易
自走式立体駐車場は商業施設などでもよく利用されている駐車場の形式です。機械式とは異なり、機械操作が不要で入出庫が簡単です。 - 入出庫の操作による待ち時間がない
自走式立体駐車場は機械操作が不要で、出勤時間なども待ち時間がなく安心して利用できます。 - 耐用年数が比較的長い
機械式駐車場と比較してメンテナンス箇所が少ないため、ローメンテナンスと言えます。修繕費等のコストを抑えることができます。また、国土交通省大臣認定の立体駐車場であれば鉄骨部材に溶融亜鉛メッキを使用している場合が多いので、錆等の発生を最小限にすることができます。
自走式立体駐車場のデメリット
- 接触事故のリスクがある
使用者自らが運転をして車を出し入れするため、接触事故が起きるリスクがあります。駐車場の設計プランを検討する際、通路や車室の幅や導線設計を最適化することでより使いやすい駐車場にすることが可能です。 - 駐車位置に傾斜ができる場合がある
自走式立体駐車場は建設にスペースが必要ですが、できるだけ収容台数を確保するために連続傾床タイプが選ばれる場合があります。スロープだけでなく駐車スペースそのものが斜めの駐車場なので、駐車場のタイプや駐車位置によっては緩い傾斜が付いた場所に駐車することになります。
マンションの機械式立体駐車場の課題
限られた土地に対して駐車台数が確保できる機械式立体駐車場は、マンション駐車場の約30%を占めています。ただ次のような課題もあります。
● ランニングコスト
● 修繕費用
● 自然災害対策
● 作動中の事故対策
順にみていきましょう。
ランニングコスト
自走式立体駐車場に比べて、機械式立体駐車場のランニングコストは、一般的に多めです。具体的には次のようなものが挙げられます。
● 点検・保守費用
● 機械を動かす電気代
● 捜査担当の人件費
機械式立体駐車場は、システムの定期点検が欠かせません。メーカーや機種によって頻度は異なりますが、公益社団法人立体駐車場工業会では、多段式の点検は3カ月毎(年4回)以上・タワー式については1カ月毎(年12回)を推奨しています。
国土交通省による「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」では、毎月の点検項目を明記しており、安全装置や制御盤などの点検が欠かせません。そのほかにも稼働のための電気代や場合によっては操作する人件費もかかります。
修繕費用
機械式立体駐車場は大きな「機械」であるため、システムの修繕や部品の交換などのメンテナンスが欠かせません。年数とともに修繕箇所や部品の交換も増えるため、修繕費用は年々コストアップしていくと考えておきましょう。
また、部品が廃盤になるリスクもあり、大規模なリニューアルが必要となるケースも。このように将来的な修繕を想定したうえで駐車料金などを設定する必要があるでしょう。
自然災害対策
地下ピット型の機械式立体駐車場の場合、大雨の際に排水ポンプの能力が間に合わず、下段の自動車が水没する危険性があります。対策としては、水害発生時には高い場所へ車を移動させる、排水ポンプの保守点検をきちんと行う、排水設備を改善するなどです。
また、大雪や台風の場合や停電時に動かせなくなるリスクもあります。停電時のために、非常用電源などの対策も考えておく必要があるでしょう。
作動中の事故対策
国土交通省の『「機械式駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き』によると、機械式立体駐車場で発生する事故の55%がマンションの駐車場内です。
画像引用:国土交通省|「機械式駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き
具体的には次のような事故例があります。
● 装置に挟まれる
● 装置内に閉じ込められる
● 隙間から子どもが落下する
● ローラーやチェーンへ巻き込まれる
事故対策としてゲートやセンサーの設置が求められています。機械式立体駐車場については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→機械式立体駐車場の記事へ
自走式立体駐車場の人気が高まっている理由
駐車面積に対して効率的に駐車場を確保できる機械式立体駐車場ですが、リニューアルや建て替えの際に自走式立体駐車場へ変更するケースが少なくありません。
その理由として次の3つが挙げられます。
● 車種の制限が少ない
● 災害に対して強い
● メンテナンスの負担が少ない
順にみていきましょう。
災害に対して強い
停電時に弱い機械式立体駐車場に対し、自走式立体駐車場では問題なく入出庫できます。災害時には、広い駐車空間を避難場所として、また支援物資を積載した車両の発着拠点としても利用できます。
メンテナンスの負担が少ない
自走式立体駐車場は、機械式立体駐車場ほど頻繁なメンテナンスは必要なく、メンテナンスフリーともいわれています。ただし、エレベーターが付属されていれば保守点検が必要です。その他、6カ月ごとの消火設備点検・照明設備・ラインや床の補修などが想定されますが、圧倒的にメンテナンス負担は少ないといえます。
マンションの立体駐車場はどうやって決める?
マンションで利用する駐車場のタイプを考える場合は、それぞれのメリット・デメリット以外に、マンションの住人のニーズを調査して決めることが大切です。ですが、住人が所持している車両はその時点の話で数年後は買い替えるものなので、将来の趣味や家族構成の変化も踏まえた意向調査が必要でそれにあわせて、管理にかかるコストなど運用のリスクや手間も考えておくようにしましょう。駐車場を利用したいと考えている住人や車両の数が多い場合などは駐車可能な車種を比較的選ばない自走式立体駐車場がおすすめです。
まとめ
マンションの立体駐車場は主に機械式立体駐車場と自走式立体駐車場の2種類です。どちらにもそれぞれメリットとデメリットがあるため、立体駐車場を設置する場合は住民のニーズなどと照らし合わせて、どちらのタイプを選ぶか判断しましょう。
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