自走式立体駐車場を設計する際には、高さに注意しなければなりません。というのも、自走式立体駐車場の天井の高さが十分でなかった場合、自動車の車高によっては破損などの事故につながってしまう可能性があるからです。そこで今回は、自走式立体駐車場の高さ制限や平均的な高さについて紹介します。
立体駐車場の種類
立体駐車場にもさまざまな種類がありますが、大きく分けると次の2種類です。
● 機械式立体駐車場
● 自走式立体駐車場
それぞれの特徴を順に説明いたします。
また、立体駐車場の種類や細かいメリット・デメリットについては下記記事をご確認ください。
関連記事:立体駐車場とは?サイズや仕組み、注意点などを解説
機械式立体駐車場
機械式立体駐車場は、駐車装置を操作し、パレットに乗せた車を移動させて出し入れするものを指します。マンションや都市部など、限られた土地に設置されることが多いのが特徴です。
代表的な機械式立体駐車場の種類は次の通り。
● 地上二段・ピット二段式
● 昇降横行式
● 垂直循環式
● エレベーター式
上下を入れ替えるだけの地上二段式から大型のタワー式のものまで規模は様々です。面積に対して、多くの駐車台数を確保できるのがメリットです。反面メンテナンスや維持コストがかかるのがデメリットと言えます。
高さ制限があるため、利用する側も駐車可能かを確認しなければなりません。加えて操作中の事故や停電時にも注意が必要です。
機械式立体駐車場については以下の記事でも詳しく解説しています。
参考記事:機械式立体駐車場とは?メリット・デメリット|設置の基本と注意点を解説!
自走式立体駐車場
自走式立体駐車場は、ドライバーが走行させ、目的の階・目的の場所まで自ら駐車するものを指します。公共施設や商業施設など大きな建物の横に設置されることが多いのが特徴です。
自走式立体駐車場には次のような種類があります。
● フラット式:各階の駐車場をスロープで連結
● スキップ式:半階ずつずらした駐車場をスロープで連結
● 連続傾床式:昇降スロープを兼ねた緩い勾配の駐車場が連続
基本的に屋根があるため、雨風をしっかり防げます。車へのダメージも少なく、自然災害時には避難場所などに有効活用できます。機械式立体駐車場に比べ、高さ制限も少なくメンテナンスの手間もかかりません。
自走式立体駐車場については以下の記事でも詳しく解説しています。
→自走式立体駐車場の記事に内部リンク
機械式立体駐車場の高さ制限
機械式駐車場のサイズは、全長5m以下×全幅1.8m以下×全高1.55m以下を一般的としております。
機械式立体駐車場の高さ・サイズ制限に関しては、
● 法令による一般的な高さ
● 機械式立体駐車場の一般的な高さ
● 機械式立体駐車場の制限を確認する方法
で確かめることができます。以下に詳しい確認方法をまとめております。
法令による一般的な高さ
機械式駐車場の高さは、国土交通省が定める「駐車場法施行令第15条の認定基準について」のなかの認定基準(二段方式の場合)第9条で、下記のように定められています。
(駐車の用に供する部分の高さ)
関係駐車の用に供する部分の高さは、1.8メートル以上とする。ただし、駐車の用に供する部分で人の立ち入らないものについては、駐車の用に供する部分の高さを1.6メートル以上とすることができる。
引用:国土交通省|駐車場法施行令第15条の認定基準について
この法令を受けて、1.6mの高さ制限を設けている機械式駐車場は多いようです。
メーカー | 車種 | 全高(m) |
---|---|---|
トヨタ | プリウス アルファ | 1.575 |
トヨタ | ウィッシュ | 1.600 |
日産 | ラフェスタ | 1.615 |
日産 | モコ | 1.625 |
ダイハツ | キャスト | 1.600 |
三菱 | eKワゴン | 1.650 |
ベンツ | Aクラス | 1.600 |
アウディ | RS Q3 | 1.595 |
スバル | フォレスター | 1.595 |
機械式立体駐車場の一般的な高さ
機械式立体駐車場の車体制限は、次のサイズが一般的です。
全長5m以下×全幅1.8m以下×全高1.55m以下
これは法令で高さ制限が1.6m以上とされていることが大きな要因です。とくに古いタイプの機械式立体駐車場であれば155㎝以下と厳しい制限となっている場合が多いようです。
しかし、軽自動車でもN-BOXやタントなどのハイルーフ系は、1.8mあるものも少なくありません。新しいタイプの立体駐車場であれば、高さ制限が200㎝以下といったものも増えてきましたが、
車高がある車を駐車する場合は、駐車のたびに高さ制限を調べる必要があります。
参考として1.55m以下の車種を紹介します。
メーカー 車種 車高(m)
ダイハツ ブーン 1.525
スバル XV 1.550
マツダ CX-3 1.550
スズキ Kei 1.550
トヨタ パッソ 1.525
三菱 コルト 1.525
車高が1.550mを少し越える車種には、ホンダのフィット(1.565m)、日産オッティ(1.570m)などがあります。このように車高制限が1.55mの場合、基準を満たしている車は極端に少なくなってしまいます。
機械式立体駐車場の制限を確認する方法
車の車高を調べるには、自動車検査表(車検証)を確認すると確実です。下記の部分を調べてみましょう。
画像引用:国土交通省
ただし車検証の数値には、ETCアンテナやスキーキャリアなどのオプションは含みません。また車幅にドアミラーが含まれない点も気を付けましょう。
155㎝以上の車高がある場合は、駐車場の入口に書かれている「高さ制限〇m」などの表示を必ず確認しましょう。
機械式立体駐車場の高さ制限以外に気を付けるポイント
高さ制限はもちろんですが、機械式立体駐車場には、他にも気にすべきチェックポイントがあります。それが次のとおりです。
● 最低地上高
● 車幅
● 車長・重量
順にみていきましょう。
最低地上高
高さに気を取られがちですが、最低地上高にも注意が必要です。とくにパレットに溝があるタイプだと、車の下回りを擦ったり、はまって動けなくなったりなどの事故が起こります。
パレット式などの最低地上高の制限は、105~130㎜以上が一般的ですが、車検をクリアできる90㎜ぎりぎりの車では利用できない場合もあるので注意しましょう。
車幅
見落としがちなのが、タイヤの太さや車幅です。標準タイヤであれば問題ないのですが、太めのタイヤだとパレットの溝に収まらない場合も。特にスポーツカーには、最初から太いタイヤが装着されているので注意が必要です。
また、サイドミラーを含めた車幅を把握しておくことも重要です。車検証に記載されている車幅は、ボディの右端から左端までの長さを指しており、ドアミラーまでの長さを含みません。稼働時にあたってしまう危険性があるので注意しましょう。
車長・重量
車長で注意すべきなのが後ろに装着しているスペアタイヤです。表示されている車長は、バンパーまでの長さを示している場合が多く、さらに実寸とメーカー値に差があるケースも少なくありません。
また重量に関する注意点は、ハイブリッドのほうがガソリンモデルより約80~120㎏重いことです。4WDも2DWよりも約50~100㎏重いため、ハイブリッド車や4WDの場合は、重さ制限まで意識する必要があるでしょう。
自走式立体駐車場の高さ・車幅制限
自走式立体駐車場のサイズは、車路で2.3m以上、車路を除いた駐車スペースで2.1m以上を基準にしております。
以下では、駐車場法や駐車場法施行令によって定められている高さの制限や、法的制限の対象となる駐車場について詳しく解説します。
駐車場法および駐車場法施行令による制限
駐車場法第11条では、駐車場の構造や設備は基準に適合させなければならないと規定されています。また、駐車場法施行令の第8条と第9条では、最低限必要であるはり下の高さについて、車路で2.3m以上、車路を除いた駐車スペースで2.1m以上と定められています。ただし、すべての駐車場がこれらの法的制限の対象となるわけではありません。
法的制限を受ける立体駐車場とは?
具体的にどのような立体駐車場が法的制限を受けるのでしょうか。
法的制限の対象となるのは、立体駐車場の中で、駐車スペースの面積が500m2以上の路外駐車場です。路外駐車場とは、道路の路面外に設置されている、不特定多数の人が利用可能な駐車場を指します。具体的には、コインパーキングなどが該当し、自治体によっては病院や大規模商業施設の駐車場などが含まれる場合もあります。一方で、マンションや従業員専用駐車場など、利用者が限定されている駐車場は該当しません。
駐車場に専用駐車場であることが明示されていない場合や、一般の人も自由に利用できるような場合は、路外駐車場とみなされる可能性があるため、注意が必要です。
マンションで使われる立体駐車場については合わせて以下の記事をご確認ください。
マンションでよく使われる立体駐車場の種類や仕組み、注意点
自走式立体駐車場の高さの平均値
自走式立体駐車場の高さの平均値はどれくらいなのでしょうか。
高さをあまり考えずに設計してしまうと、思わぬ事故につながる恐れがあるため、以下でよく確認しておきましょう。
高さ制限の一般的な平均値
高さ制限の一般的な値は、2~2.5mです。この高さであれば、普通自動車はもちろん、大型ミニバンでも問題なく駐車できます。(高さ制限の他、重量に制限がある場合もあります。)
古い年式の自走式立体駐車場の場合
古い年式の自走式立体駐車場の場合、高さを1.79mに制限しているところもあります。
1.79mとなると、一般的な軽自動車でも、車種によっては駐車が困難なこともあるでしょう。
普通自動車でも車高が高いものだと、2m近くになることがあるため、天井を低めに設定するのは避けたほうが無難です。
高さ制限の表示方法を要確認
自走式立体駐車場の入口には、ドライバーが高さを確認できるような看板を設置しましょう。
看板はドライバーの目に留まりやすい場所に設置し、太文字にしたり赤文字にしたりして目立つようにします。
他よりも天井の高さが低くなっている場所には、「高さ注意」と記載をすると、ドライバーへの注意喚起になり、親切です。
自走式立体駐車場の高さを超えた場合に起きる事故
では、自走式立体駐車場に、高さ制限を超える高さの車が進入した場合はどうなるのでしょうか。以下では、起こりうる事故や事故を防ぐ方法などを詳しく解説します。
制限に気付かず事故を起こすとどうなる?
高さ制限を超えた車が進入すると、車体が立体駐車場の入庫ゲートや、建物内の設備にぶつかってしまいます。
特に係員のいない立体駐車場では、事故を起こした当事者を特定しにくいため、所有者が破損部分の修繕費用を負担しなければならない状況になることもあります。
ミニバンの車は特に注意
最近人気が拡大しているミニバンやSUVなどは、車高が高い車種です。そのため、立体駐車場の高さ制限があまりにも低くならないものを建設する必要があります。
たとえ、入口付近はミニバンやSUVの車高以上の高さがあり、入庫できたとしても、駐車場内のスロープや段差がある場所で車両が天井に当たってしまう恐れがあります。
よって、今後新しい立体駐車場を建設する際は、ミニバンやSUVが問題なく駐車できるように余裕のある高さ制限を設けましょう。
事故を防ぐには?
高さが原因の事故を防ぐためには、天井の高さを高くしたり、高さ制限の看板をわかりやすい場所に設置したりすることが大切です。入口より手前に、高さ制限バーを設置するのも注意喚起の効果があります。
さらに、防犯カメラの設置をドライバーの見える位置に告知することで、無理な入庫を防げるでしょう。
まとめ
自走式立体駐車場の高さの平均値は2~2..5mです。古い年式の立体駐車場の中には、高さが1.79mに制限されているところもありますが、最近は車高が高い車も多いため、天井の低い立体駐車場を建設するのは避けたほうがよいでしょう。これから駐車場設置を考えている方は高さについてよく考えておくことをおすすめします。
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