限られた敷地であっても駐車台数を確保できるのが立体駐車場です。そのなかでもマンション駐車場の約30%を占めているのが機械式立体駐車場。
この記事では、マンションに機械式立体駐車場を設置するメリットとデメリットを解説します。すでに機械式立体駐車場を設置している場合は、建て替え時の注意点も紹介するので参考にしてください。
マンションの機械式立体駐車場の種類
マンションに設置される機械式立体駐車場には、おもに次の3種があります。
● 二段・ピット式
● 昇降横行式(パズル式)
● タワー式
順にみていきましょう。
二段・ピット式
画像引用:国土交通省|「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き
フォークリフトのようにパレットを昇降させ車を収納させるタイプの駐車場です。機械式駐車場の中で最もメジャーといえます。地下に収めるタイプや3段タイプなどもあります。
昇降横行式(パズル式)
画像引用:国土交通省|「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き
1台の空きスペースを利用して、パレットをパズルのように上下左右に動かして収めるタイプの駐車場です。一般的には三段型が多く、地上二段式やピット二段式との混合型もあります。
タワー式
画像引用:国土交通省|「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き
1階部分に車を駐車させる駐車室があり、パレットを垂直方向に循環させて入出庫させます。縦方向に長い構造であることからタワー式と呼ばれています。
駐車場の種類については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→※「駐車場 種類」の記事
「駐車場の種類をカテゴリ別に徹底解説|駐車場経営を検討する際の手順も紹介」
マンションに機械式立体駐車場を設置するメリット
マンションに機械式立体駐車場を設置するメリットのうち、代表的なものは次の3つです。
● 限られた敷地でも駐車台数を確保できる
● 近隣車両とのトラブルが少ない
● 盗難やいたずらのリスクが減る
順にみていきましょう。
限られた敷地でも駐車台数を確保できる
機械式立体駐車場の一番のメリットは、狭い土地でも多くの駐車台数を確保できる点です。とくに都市部や丘陵地帯など十分な敷地面積が確保できない場合は、唯一の選択肢となる場合もあります。平面駐車場の場合は、設置やメンテナンスのコストを低く抑えられる一方で、駐車台数分の敷地(面積)が必要です。また、自走式立体駐車場も限られた面積で多くの駐車スペースを確保できますが、機械式立体駐車場に比べスロープ分の面積が必要となります。限られた敷地しかない場合は、機械式立体駐車場一択となるでしょう。
近隣車両とのトラブルが少ない
機械式立体駐車場は、各スペースに収納されているため、隣の車との接触の心配がほとんどありません。● ドアを開けた際、隣に停めていた車のボディにドアを当てて傷つけた
● 駐車に失敗して隣の車を傷つけた
● 当て逃げにあって犯人がわからない
以上のような被害を心配しなくても済みます。
盗難やいたずらのリスクが減る
基本的に利用者以外は操作ができないため、車上荒らしや盗難などの犯罪の心配がありません。犯罪の対象になる機会が減るため、近隣の治安維持のためにも効果的です。防犯カメラ、照明、センサー、アラームなどを設置していると、さらに安心です。マンションで機械式立体駐車場を設置するデメリット
機械式立体駐車場にはデメリットもあります。それが次の5つです。
● 入庫できる車両サイズに制限がある
● メンテナンスに手間がかかる
● 維持コストが高い
● 停電時や災害時に利用できない
● 事故対策する必要がある
順にみていきましょう。
入庫できる車両サイズに制限がある
機械式駐車場は、利用できる車両サイズの制限があります。パレットのサイズに合わない車両は駐車できません。都市部の機械式立体駐車場の多くは、次のようなサイズ制限が一般的です。
全長5m以下×全幅1.8m以下×全高1.55m以下
スライドドアタイプの軽自動車やワンボックスは、車高が1.8m近くあるものも少なくありません。そのため、車高制限1.55mはかなり厳しい数値といえます。車高制限についての法令や注意ポイントについては、こちらの記事に詳しく解説しています。
→「マンション 高さ制限」の記事
メンテナンスに手間がかかる
平面駐車場や自走式立体駐車場と比較して、機械式立体駐車場はメンテナンスに手間と費用がかかります。具体的には、次のようなものがあります。● 毎月の点検
● 部品の交換
● 不具合の修理
機械式立体駐車場は大きな機械設備であり、安全を維持するためには定期的なメンテナンスが欠かせません。
建築基準法第8条第1項に「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない」と定められており、保守点検は義務といえます。
国土交通省が発表した『機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン』の「管理者の取り組み(P71)」においても「専門技術者による点検を1~3カ月に1度を目安として必要な措置を講じること」とあります。
維持コストが高い
定期点検のコストに加え、修繕などの維持コストも必要です。国土交通省が出しているガイドラインによると、マンションの機械式駐車場の1台当たりの月修繕工事費の目安は次の通りです。表引用:国土交通省|マンションの修繕積立金に関するガイドライン
これは、定期メンテナンスに必要なコストの目安になります。長期修繕計画のために、住民もしくはオーナーが積み立てておく必要があるでしょう。
停電時や災害時に利用できない
機械式立体駐車場の一番の弱点は、停電時に動かせないことです。災害時に停電となってしまうと、移動手段を失うことにもつながります。また停電していない場合でも、大雪・台風・大雨などの災害時に装置を作動させる危険性も無視できません。地下にピットがある場合は、水害時に浸水の心配もあります。
事故対策する必要がある
国土交通省の「機械式駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引きによると、機械式駐車場の死亡・重傷事故のうち55%がマンション駐車場内で起こっています。画像引用:国土交通省|「機械式駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き
具体的な事故例としては次のようなものがあります。
● ピット内に閉じ込められた
● 機械に挟まれた
● チェーンなどに巻き込まれた
● くぼみに落ちた
国土交通省は、ガードやセンサーを設置するように呼び掛けていますが、自走式立体駐車場に比べて事故が多いのは事実です。
→「機械式立体駐車場」の記事
機械式駐車場とは?メリット・デメリットから分かる設置の基本と注意点を解説!
自走式立体駐車場へ建て替えが増えている理由
マンションの駐車場では、メジャーな機械式立体駐車場ですが、10~15年で建て替え時期が来ます。その際に、自走式立体駐車場に建て替えるケースが少なくありません。その理由を3つ紹介します。
● 建て替え費用
● メンテナンス費用
● 多様なニーズ
順にみていきましょう。
建て替え費用
機械式駐車場のリニューアルの場合、交換費用は1パレット当たり100万~150万円かかります。全面的に建て替える場合であれば、1パレット当たり100万~500万円の費用が必要。(駐車場の規模によります)また、タワー式の場合は、機械を覆う外壁が必要なため、もう少し高めの傾向です。自走式立体駐車場に建て替える場合の費用は、1台当たり200万~400万円となり、それほど大きな費用の差はありません。しかし大きく差が出るのは、次で紹介するメンテナンス費用です。
※費用は規模、条件等により異なります。
メンテナンス費用と頻度
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、機械式立体駐車場の毎月のメンテナンス費用の目安は、1台当たり数千円です。計算式は次の通りです。(基本料金+3,000円~5,000円/台+オプション)×メンテナンス回数
さらに保守点検のための費用も必要なうえ、頻度も1~3カ月と多めです。一方、自走式立体駐車場の場合は、5~10年に1度とメンテナンスサイクルが長く、コスト面や手間の面においてメリットが大きいといえます。
マンションで利用されている自走式立体駐車場については合わせて下記記事をご確認ください。
⇒マンションでよく使われる立体駐車場の種類や仕組み、注意点
多様なニーズ
近年は、タントやN-BOXなど、軽自動車でも車高が高いものが多いのが特徴です。新しいタイプの機械式立体駐車場には、高さ制限が高いものも現れていますが、ほとんどの場合、車幅や車長によって駐車できる車種が制限されてしまいます。建て替えの際には、利用者のニーズに合っているかを一度検討すべきかもしれません。災害時の強さ
機械式駐車場は災害時に弱い反面、自走式駐車場は災害時に活用できます。地震・津波・台風・豪雨の場合は、避難場所として利用可能。非常物資を運ぶ車を停めるなど、防災拠点としても活用できます。太陽パネルを設置すれば非常用電源として利用できるでしょう。
→駐車場以外の活用方法
「自走式立体駐車場は駐車以外にも活用できる!活用方法とポイントを解説」へ
まとめ
機械式駐車場は、限られた敷地面積を有効活用できる反面、メンテナンスの負担が大きいためコスト面のデメリットも。建て替え時期に自走式立体駐車場を検討するオーナー様も少なくありません。
綿半ソリューションズ(株)は、自走式駐車場の老舗であり、国土交通大臣認定の『stageW』を提供しています。自走式立体駐車場の建設を検討している方は、綿半ソリューションズ株式会社にご相談ください。
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