自走式立体駐車場は各階層をスロープでつないでいますが、床形式によって種類や特長に違いがあります。
この記事では、床形式ごとに違うスロープの特長や役割を解説します。自走式立体駐車場を建設する場合のメリットについても紹介するので参考にしてください。
自走式立体駐車場のスロープとは
自走式立体駐車場のスロープの特長について次の2点にまとめました。
・車幅の規定
・勾配やカーブの径の規定
順にみていきましょう。
車幅の規定
自走式立体駐車場のスロープは、各階を緩やかにつなぐ役割を持ちます。面積や車幅は駐車場ごとに調整できるわけではなく、国土交通省により車路の幅などが決められています。
車室に面した車路の幅は次のとおりです。一般的なスロープの幅員は5.5~7.0m、空間の制約などによりやむを得ない場合はカッコ内の数値まで縮小できます。
対象車両 | 歩行者用通路なし(m) | 歩行者通路あり(m) |
---|---|---|
軽自動車 小型乗用車 普通乗用車 | 7.0(5.5) | 6.5(5.0-5.5) |
小型貨物車 | 7.5(6.5) | 7.0(6.0) |
大型貨物車 およびバス | 13.0(11.5) | 12.5(11.0) |
車両の後退・回転などが行われることなく、車両の通行のみに用いられる車路は次の値以上を確保するとされています。
対象車両 | 対面通行(m) | 一方通行(m) |
---|---|---|
軽自動車 小型乗用車 普通乗用車 | 5.5 | 3.5 |
小型貨物車 | 5.9 | 3.7 |
大型貨物車 およびバス | 6.5 | 4.0 |
勾配やカーブの径の規定
車路の幅に加え、勾配やカーブの径にも規定があります。使用できる土地面積が少ない場合は勾配をきつくして、面積を少なくすればいいと考えるかもしれませんが、国土交通省によって12%以下と定められています。
引用:「車路の縦断勾配は12%以下とすることが望ましいが、普通乗用車以下の車両を対象とする場合で、やむを得ない場合は17%まで増すことができるものとする。なお、縦断勾配の変化する箇所では、必要に応じ勾配のすり付けを行うものとする」
参照:国土交通省|駐車場設計・施行指針
勾配のすり付けとは、直線区間から曲線区間に移行する際、横断形状が両勾配から片勾配に移り変わるため、道路面の急激な変化を避ける目的で、横断勾配を少しずつ変化させてなめらかにすりつけることです。
またカーブの径についても、対象車両に応じて次の値以上とするように決められています。
対象車両 | 対象車両 |
---|---|
軽自動車 小型乗用車 普通乗用車 | 5.0 |
小型貨物車 | 5.0 |
大型貨物車 およびバス | 8.2 |
このようにスロープ部分の幅や径、勾配などの規定は細かく設定されています。建設の際には、規定をチェックしたうえで計画しましょう。
床形式の種類とスロープの役割
床形式の種類によってスロープの形態や役割が多少違います。自走式立体駐車場の床形式には次の3つのタイプがあり、スロープの形も違います
・フラット式
・スキップ式
・連続傾床式
それぞれ詳しくみていきましょう。
フラット式
フラット式は、平らな階層をスロープでつなぐ形式で、自走式駐車場の基本タイプです。フロア全体が平らで駐車しやすいのが特長のため、 ショッピングカートを利用する商業施設や車いすの方が利用する病院などに適しています。スロープの勾配は17%以下で、長さは18m以上必要です。
スキップ式
フロアを段違いに組み合わせ、半階ずつスロープでつなぐ形式です。スロープが半階分の長さで狭い敷地でも駐車台数を確保できるため、集合住宅にも適しています。 傾斜や段差のある敷地でも建設でき、敷地の形状を無駄なく利用できるのもメリットです。
連続傾床式
フロアを緩やかに傾斜させ、各階層をらせん状につなぐ形式です。スロープが昇降と車路を兼ねているため、駐車効率が最もよい床形式といえます。 ほかの床形式に比べて10~30%ほど収容効率が上がるため、時間貸し駐車場など、狭い土地でも多くの駐車台数を確保したい場合に適しています。傾斜は4%以下とゆったりです。
自走式立体駐車場の利用者メリット
緩やかなスロープで各階をつないだ自走式立体駐車場は、利用者にとって次のようなメリットがあります。機械式立体駐車場と比較しながら、紹介します。
・車の出し入れが容易
・入出庫の操作が不要
・荷物の出し入れが簡単
・荷物の出し入れが簡単
・雨風や日光によるダメージが少ない
順にみていきましょう。
車の出し入れが容易
下の階からスロープに沿って運転していくだけで駐車スペースを探せます。余裕をもって駐車できる場合が多く、駐車作業が苦手な方でも安心です。 中間柱がないstageWのスーパーロングスパン構造なら、さらに見通しが良く安全です。柱間の最大スパンは、フラット式であれば17.2mと広く、レイアウトの自由度が広がります。
入出庫の操作が不要
自走式立体駐車場は、機械式立体駐車場のような入出庫の操作が必要ありません。 混雑時には、上の階までスロープを昇りながら空きスペースを探す必要がありますが、機械式立体駐車場のように操作パネルの順番待ちなどはありません。 最近では、先に清算を済ませておけば、出口で駐車券を差し込まなくても自動でバーが上がるようなシステムもあります。
荷物の出し入れが簡単
自走式立体駐車場では、運転者と同時に乗降できますが、機械式立体駐車場では、駐車前に同乗者や荷物を降ろしておく必要があります。 先に荷物を降ろす場合、防犯面で心配なこともあるでしょう。その点、自走式立体駐車場では、事前に対応すべきことはなく、荷物の出し入れも簡単です。
車両サイズの制限が緩い
自走式立体駐車場の場合は制限が少なく、ほとんどの車種が駐車可能です。一方、機械式立体駐車場は、車両サイズの制限が多いため利用できる車種が限られてしまいます。
機械式立体駐車場における一般的なサイズ制限は、次のとおりです。
・全長5000mm以下
・全幅1800mm以下
・全高1550mm以下
比較的新しい駐車場であれば、全長と全幅にプラス5㎝の余裕があります。ただし全高に関しては、変わらず1550mm以下となっているようです。SUV車、ミニバン、ワンボックスなど人気のハイルーフ型だと、どれも1550mm以上のため、
機械式立体駐車場を利用できないケースがほとんどです。車種によらず対応できる自走式立体駐車場は、現代のニーズに合っているといえます。
雨風や日光によるダメージが少ない
自走式立体駐車場は、屋根や壁があるため雨風や紫外線から車を守ってくれます。そのため車へのダメージが少ないのがメリットです。例えば、夏の直射日光にさらされた車内の温度は50度以上にもなります。 屋根のある自走式立体駐車場だと、車内の温度上昇も抑えられ、運転者に対してのダメージも少なく済むでしょう。さらに屋根や壁によって守られているため、悪天候の乗降もスムーズです。
自走式立体駐車場の建築面でのメリット
自走式立体駐車場は、建設面でも多くのメリットがあります。それを次の4つのポイントにまとめました。
・認定駐車場であればコストや工期をカットできる
・メンテナンスの手間やコストの負担が少ない
・地域貢献の役割がある
・耐用年数が長い
順にみていきましょう。
認定駐車場であればコストや工期をカットできる
国土交通大臣認定駐車場であれば、規格が決まっているため建設の流れがスムーズです。工期も短縮できるうえ、使用する材料も決まっており無駄なコストがかかりません。
また、耐火被覆が免除になり消火設備が簡易にできるため、イニシャルコストを低減できます。
このように認定駐車場であれば、高品質の駐車場建築が保証されているといえます。
認定駐車場については、こちらの記事で詳しく解説しています。参考にしてください。
⇒自走式立体駐車場の認定駐車場とは?建設メリット5選|認定の種類・特長も詳しく解説
メンテナンスの負担が少ない
部品や機械の交換などが少ない自走式立体駐車場は、メンテナンスにかかる費用や負担が少なく済みます。 もちろん定期点検は必要ですが、点検のスパンも長く、消火設備も簡易で済むなど、負担がかなり抑えられるでしょう。
地域貢献の役割もある
自走式立体駐車場は、壁がなく開放性が高いことから津波などの災害時の避難場所に利用できます。緩やかなスロープは、高齢者や車いす利用者が避難しやすい構造となっています。 とくにstageWは、幅広のスロープを採用しており、大人数が一度に避難しても混乱が起きにくいでしょう。段ボールの壁で仕切れば、簡易の治療室も作れるので、地域の避難場所として役立てられます。
耐用年数が長い
使用する鉄骨を溶融亜鉛メッキで加工している場合は、塩害地域でも耐用年数が25-45年と長めです。
部品の交換や故障といったメンテナンスがほぼないため、機械式に比べ負担が少ないといえます。また耐用年数が約15年の機械式立体駐車場と比べると、自走式立体駐車場は15~38年と長めです。
耐用年数については、こちらの記事で詳しく解説しています。参考にしてください。
⇒立体駐車場の耐用年数は?メンテナンスポイントや建て替えのサインを解説
スロープも駐車スペースに利用できる立体駐車場ならstageW
スキップ式の自走式立体駐車場であれば、スロープ部分も駐車スペースとして利用でき効率的です。さらに認定駐車場なら、工期やコスト面でも納得いただけるでしょう。
stageWは、国土交通大臣認定の自走式立体駐車場メーカーとして、長年の実績があるため、さまざまなお客様のニーズにあわせて最適な提案が可能です。
自走式立体駐車場の建設を検討している方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。