立体駐車場の消火設備で注意するポイントは?消防法・点検頻度・種類などを解説

立体駐車場において、リスクに備えて十分な消火設備を備えておくことは重要です。
立体駐車場に設置すべき消火設備は、消防法により細かく決められているため、建設の際には規定に則り設置しなければなりません。
この記事では、屋内駐車場の経営を検討している方のために、屋内駐車場建設のメリット・デメリットを解説します。注意点なども紹介するので参考にしてください。

立体駐車場の消防設備とは

立体駐車場の消防設備とは

立体駐車場の消防設備について、次の3つのポイントにまとめました。

・立体駐車場における消防設備の条件
・消防設備の点検頻度
・消防設備の種類

それぞれ詳しく見ていきましょう。

立体駐車場における消防設備の条件

消防法施行令第10条・第13条によると、次の条件に該当する駐車場には消防設備を設置する必要があります。

・階面積が500平方メートル以上/2階以上の階は300平方メートル以上の駐車場
・屋上面積が300平方メートル以上の駐車場
・収容台数が10台以上の機械式立体駐車場

消防設備は、大きく分けて警報設備と消火設備の2種類があります。 その中でも細かく種類が分かれており、自走式立体駐車場と機械式立体駐車場でも適した消火設備は異なります。

参照:消防法施行令

消防設備の点検頻度

消防設備点検には「総合点検」と「機器点検」の2種類があります。
点検頻度や点検項目の違いがあるので注意しましょう。

総合点検

消防設備の全部もしくは一部を作動させ、総合的な機能を消防設備の種類に応じて点検します。それぞれの消防設備が点検基準に達しているかを確認するためのものです。 点検頻度は12カ月に1回以上で行います。

機器点検

機器点検は、消防設備の適正な配置、損傷の有無、外観から判別できる事項、簡単な操作による確認などを消防設備の種類に応じて行います。例えば、非常用電源や動力消防ポンプが正常に作動するかなどです。 点検頻度は、6カ月に1回以上で行います。

その他

ほかにも12カ月に1回の頻度で、次のようなものが定められています。

・消防届出書類の提出
・避難経路に障害物がないか確認
・避難訓練の実地
・防火管理者の選任
・連結送水管耐圧試験

連結送水管の耐圧試験では、火災の際に消防隊が使用する連結送水管の配管や接続部分などが変形していないか、漏水がないかなどをチェックします。

消防設備点検をしたら点検結果報告書を作成し、防火対象物関係者が所轄の消防署に提出します。 消火設備の点検は、消防法に定められている義務であり、違反すると罰則や罰金に書せられることもあるので注意しましょう。

消防法第45条では、両罰規定といって法人に属する役員や従業員が違反した場合、個人だけでなく法人もあわせて罰せられると規定されています。 最大1億円もの重い罰則が科せられることもあります。

消防設備の種類

消防設備には大きく分けて以下の2つの種類があります。

自火報設備

自火報設備の設置が規定されているのは、次のようなケースです。

・延べ面積500平方メートル以上の場合
・地階、無窓階又は3階以上の階で床面積300平方メートル以上の場合
・地階又は2階以上の階のうち駐車部分の床面積が200平方メートル以上の場合

また、延べ面積が1,000平方メートル以上の駐車場においては、消防機関へ通報するための火災報知設備の設置が必要です。 火災報知設備の感知器には、「煙感知器」「熱感知器」「炎感知器」の3種類があります。

消火設備

消防法施行令第13条において次のような規定があります。

・地階または2階以上の階で200平方メートル以上
・1階で500平方メートル以上
・屋上部分で300平方メートル以上
・昇降機等の機械装置で車輛を駐車させる構造で収容台数が10台以上

以上に当てはまる駐車場では、下記のいずれかの消火設備を設置する必要があります。

・水噴霧火設備
・泡消火設備
・不活性ガス消火設備
・ハロゲン化消火設備
・粉末消火器

一般的に、人が出入りする自走式駐車場では泡消火設備、人がいない機械式駐車場では不活性ガスなどのガス系消火設備が使用されています。

消火設備の種類

消火設備の種類

消火設備には、それぞれ特徴があり、適した場所も異なります。

・水噴霧火設備
・泡消火設備
・不活性ガス消火設備
・ハロゲン化消火設備
・粉末消火器

各消火設備の種類と特徴について説明していきましょう。

水噴霧消火設備

水噴霧消火設備は、スプリンクラー設備と同様に水を散水して火災を消化する設備です。 散水する水の粒を細かく(500μm~1000μm)して放射します。熱を奪って冷却すると同時に、発生する水蒸気による窒息作用で燃焼を防ぎます。

泡消火設備

自走式立体駐車場で設置されることが多いのが泡消火設備です。 加圧送水装置から圧送された消火用水に泡消火薬剤を混ぜ溶液を生成し、泡放出口で空気を吸引して発砲します。火面を泡で覆うことで、窒息・冷却して消火する仕組みです。
設備には、固定式と移動式があります。 所定の基準を満たした場合は、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化消火設備又は粉末消火設備を設置する際、移動式の消火設備でもよいとされています。

不活性ガス消火設備

不活性ガス消火設備は、車室内に人がいない機械式立体駐車場で最も設置されている消火設備です。 二酸化炭素や窒素などを閉鎖空間に満たすことで酸素濃度を低くさせて消火します。機械式立体駐車場では全域放出方式を採用しています。

ハロゲン化消火設備

ハロゲン化消火設備は、ハロゲン化合物を消火剤として使用します。噴射ヘッドまたはノズルからハロゲン化物消火剤を放射し、 消火剤に含まれるフッ素、塩素、臭素などのハロゲン元素による燃焼反応の抑制操作により消火します。
点検中の誤作動などで死亡事故につながりやすく、現行法では機械式立体駐車場での新規設置が認められていません。

粉末消火器

粉末消火器は、普通火災、油火災、電気火災など、あらゆる種類の火災に対応可能な万能消火器です。消火剤は、炭酸ガスなどの高圧ガスで噴射され、冷却効果や窒息効果によって消火する仕組みです。 粉末には「リン酸塩類」「炭酸水素塩類」などを使用しており、消火器シェアの90%以上を占めています。腐食や変形をさせないよう、正しい方法で管理しましょう。

機械式立体駐車場に多い不活性ガス消火設備の問題点

機械式立体駐車場に多い不活性ガス消火設備の問題点

機械式立体駐車場で使用頻度が高い不活性ガス消火設備ですが、下記のような問題点もあります。

・経年劣化や点検時に事故が起こりやすい
・死亡事故につながりやすいため注意喚起対象
・消防法令が改正

それぞれ詳しく解説していきましょう。

経年劣化や点検時に事故が起こりやすい

総務省消防庁の検討会の資料によると、火災時に正常に作動しなかった、点検時に誤作動したなどで事故が起こるケースが少なくありません。近年でも次のような事故が起こっています。

年月内容被害
令和2年12月愛知県名古屋市のホテルの機械式立体駐車場において、メンテナンス作業中、二酸化炭素消火設備から二酸化炭素が放出1名が死亡
10名が重軽傷
令和3年1月東京都港区のビル地下1階駐車場内ボンベ室において、二酸化炭素消火設備の点検作業(作動点検等)中、二酸化炭素が放出作業員2名が死亡
令和3年4月東京都新宿区のマンション地下1階駐車場において、内装業者が天井ボードの貼り替え作業をしていたところ何らかの原因で二酸化炭素消火設備が作動取り残された作業員4名が死亡、
1人が意識不明の重体
参照:中部近畿産業保安監督部
上記のように点検中の事故が多く、死亡や重症になりやすいため注意が必要です。

死亡事故につながりやすいため注意喚起対象

高濃度の二酸化炭素には毒性(麻酔性)があるうえ、酸素濃度が急激に低下するため、誤作動によって命にかかわるケースも少なくありません。 消防庁では、有資格者の立会や適切な安全衛生管理体制のもと、定められた手順に沿った作業の実地を示唆しています。また、消防庁に加え厚生労働省や経済産業省も同様に注意喚起しています。

消防法令が改正

令和2年から3年にかけて、全域放出方式の二酸化炭素消火設備に関わる死亡事故が相次いだため、令和5年から二酸化炭素消火設備の基準が変更されました。
消防法令が次のとおり改正されています。

・消防設備士などによる点検が義務化
・二酸化炭素消火設備に関わる技術上の基準が追加

これは、すでに設置されている二酸化炭素消火設備も対象となっています。

自走式立体駐車場で消火設備が簡略化される理由

自走式立体駐車場で消火設備が簡略化される理由

立体駐車場には消火設備が必須ですが、自走式立体駐車場において消火設備が簡略化されるケースがあります。それは国土交通大臣認定の駐車場である場合です。
詳しくは次のとおりです。

・国土交通大臣認定である
・要構造部の鉄骨に耐火被覆が不要
・消火設備が簡易

順に見ていきましょう。

国土交通大臣認定である

認定駐車場とは、建築基準法(第68条の25および10)に基づいたもので、「耐火建築物に相当する防耐火性能を有する耐火建築物」として国土交通大臣の認定を取得したことを意味します。 認定を受けると、消火設備の簡易化や耐火被覆の免除などが可能です。

主要構造部の鉄骨に耐火被覆が不要

認定自走式駐車場は、原則として外壁が設置されていません。開放された構造のため、火災発生時の煙の蓄積やフラッシュオーバーなどが起きにくいといった特徴があります。 また、在来工法では、柱や梁に耐火被覆が施されていますが、認定駐車場の場合は主要構造部の鉄骨の柱や梁に耐火被覆が不要です。

消火設備が簡易

外壁を設けない解放された構造のため、在来工法では1500平方メートルごとに義務付けられている防火区画や防火シャッターが不要です。 また在来工法では必要とされる固定式の泡消火設備も、移動式の粉末消火設備に簡易化することが可能となっています。

国土交通大臣認定の自走式立体駐車場なら消火設備の負担が軽い

国土交通大臣認定の自走式立体駐車場なら消火設備の負担が軽い

この記事では、立体駐車場における消火設備について詳しく解説しました。防火面やコスト面で有利な国土交通大臣認定の立体駐車場ですが、その他にもメリットがあります。

基本な仕様が決まっているため素材の調達がスピーディにできる、建築工程がシンプルなため短い工期で完成できるなどです。 もちろん建築を依頼する際には、信頼ある建設会社を選ぶことも重要です。

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