駐車場を建設・運営する際は、利用者にとって安全で快適な空間を確保することが重要です。
国土交通省は、この目的を達成するために「駐車場設計・施工指針」を策定しており、駐車場の寸法や構造に関する具体的な基準を定めています。
この記事では、国土交通省が定める駐車場の寸法基準について詳しく解説します。
駐車場の設置を検討している方や、既存の駐車場の安全性を見直したい方にとって、役立つ情報となるでしょう。
国土交通省が示す駐車場に必要なスペースとは
国土交通省の「駐車場設計・施工指針について」を参照に、駐車場に必要なスペースを解説します。
● 駐車ますの寸法
● 天井の高さ
● 車路の幅員
● 勾配・出入口の寸法
それぞれ詳しく見ていきましょう。
駐車ますの寸法
駐車ますとは、個々の車両を駐車するためのスペースを指します。
駐車ますの寸法は、駐車する車両の種類によって異なりますが、幅員2.5m以上×長さ6m以上が基本です。
国土交通省の指針には、車両別に、必要な大きさを表にまとめてあります。それが以下です。
設計対象車両 | 長さ | 幅員 |
---|---|---|
軽自動車 | 3.6 | 2.0 |
小型乗用車 | 5.0 | 2.3 |
普通乗用車 | 6.0 | 2.5 |
国土交通省の「駐車場設計・施工指針について」 普通乗用車だけでなく軽自動車専用の駐車ますを設置することで、駐車スペースを有効に活用できます。その場合も幅員2.0m以上×長さ3.6m以上を確保しましょう。
天井の高さ
駐車場の天井高には、車両の高さに余裕を加えた高さが求められます。具体的には、最低2.1m以上の高さが必要です。 これは軽自動車の車室の場合の最低必要数値で、普通乗用車の場合は、2.2m以上の高さを確保しましょう。
設計対象車両 | 長さ | 幅員 |
---|---|---|
軽自動車 | 2.3 | 2.1 |
小型乗用車 | 2.3 | 2.1 |
普通乗用車 | 2.4 | 2.2 |
国土交通省の「駐車場設計・施工指針について」
車路の幅員
車路とは、駐車場内を車両が通行する通路のことです。車路の幅員は、車両のすれ違いを考慮した幅が求められます。 具体的には、最小5.5m以上の幅を確保(一方通行の場合は5.0m)する必要があります。
設計対象車両 | ||||
---|---|---|---|---|
幅員 | 幅員 | 歩行者用通路なし | 歩行者用通路あり | 歩行者用通路なし | 歩行者用通路あり |
軽自動車 | 7.0 | 6.5 | 5.5 | 5.5 (対面通行) 5.0 (対面通行) |
小型乗用車 | ||||
普通乗用車 |
表引用:国土交通省「駐車場設計・施工指針について」
ただし5.5m(5.0m)は、どうしても確保できない場合の数値であり、基本的には6.5m~7.0mが必要です。また、スロープなど車室に面していない車路の場合は、以下のとおりです。
設計対象車両 | ||
---|---|---|
幅員 | 歩行者用通路なし | 歩行者用通路あり |
軽自動車 | 5.5 | 3.5 |
小型乗用車 | ||
普通乗用車 |
以上のことから、車路は最低5.5m必要なことがわかります。
勾配・出入口の寸法
駐車場の勾配は、車両が安全に通行できる範囲で設定されています。具体的には、普通乗用車以下の車両を対象とする場合で12%以下です。やむを得ない場合は17%まで増すことが可とされています。 出入口の寸法は、車両の円滑な出入車を可能にする幅が求められます。目安の寸法は、片側3.6m(2台分で7.2m)以上の幅となっています。また、水たまりが生じないよう、排水に留意しましょう。
自走式立体駐車場以外の寸法やサイズ
上記で解説したのは自走式立体駐車場の寸法でした。ここでは、平面式駐車場と機械式立体駐車場の寸法とサイズについて紹介します。
平面式駐車場の寸法
平面式駐車場は、スロープやリフトを用いずに車両を駐車する形式の駐車場です。基本的な駐車ますのサイズは、自走式立体駐車場と同様です。
一般的に、自走式立体駐車場よりも広い駐車スペースを確保できるため、大型車や車高の高い車両の駐車にも適しています。ゆとりをもたせた駐車ますにする場合は、以下の表を目安に長さや幅を加えましょう。
車種 | 加えるゆとりの目安 |
---|---|
小型自動車 | ・長さ:約0.6~1.3m ・幅 :約0.5~0.6m |
普通自動車 | ・長さ:約1.3m ・幅 :約0.8m |
車いす用の駐車場の場合は、駐車ますの幅員を3.5m以上確保する必要があります。
「身体障害者用駐車施設の幅は、車体用スペース幅2.1m程度に、高齢者・身体障害者等が円滑に乗降可能な乗降用スペース幅1.4m以上を加えた、3.5m以上確保するものとする。 」
(引用:国土交通省|道路の移動円滑化整備ガイドライン)
機械式立体駐車場の寸法
機械式立体駐車場には以下のような種類があります。
● エレベーター方式
● 平面往復方式
● 垂直循環方式
● 水平循環方式
● 多層循環方式
国土交通省によれば、機械式立体駐車場の高さや幅に関する寸法は以下のとおりです。
はりの下の高さ | 2.1m以上 |
---|---|
駐車室の高さ | 1.6m以上 |
乗降室の高さ | 1.8m以上 |
幅 | 自動車1台の幅に0.5mを加えた寸法 |
自動二輪車用の装置で運転して立ち入る場合は、高さ2.1m以上が必要です。
参照:国土交通省|機械式駐車装置の構造及び設備並びに安全機能に関する基準」
駐車場の寸法を決める際に注意すべきこと
駐車場の寸法を決める際には、単に国土交通省の基準を満たすだけでなく、利用者にとって安全で快適な空間を確保することが重要です。 以下では、駐車場の寸法を決める際に注意すべきポイントを詳しく解説します。
車種の寸法を意識する
駐車場の寸法を決める際には、まず駐車する車両の寸法を意識する必要があります。車種によってサイズは異なりますが、一般的には以下のサイズを目安としましょう。
車両サイズ | 全長(m) | 全幅(m) | 全高(m) | 車種例 |
---|---|---|---|---|
軽自動車 | 3.4 | 1.48 | 1.75 | スズキワゴンR、ダイハツムーブ など |
小型自動車 | 4.1 | 1.7 | 1.5 | ホンダフィット、トヨタヤリス など |
普通自動車(中型) | 4.7 | 1.7 | 1.5 | トヨタプリウス、トヨタカローラ など |
普通自動車(大型) | 5.0 | 1.85 | 2.0 | トヨタアルファード、日産セレナ など |
これらのサイズを参考に、駐車スペースの幅と奥行きを決定します。特に、大型車の場合は、ドアの開閉スペースや車幅灯の点灯位置なども考慮する必要があるでしょう。 また。トヨタハイエースの場合は、全高が約2.3mとかなり大きめな車種もあるので注意が必要です。
車間・背後の幅を考慮する
駐車スペースの幅は、車のサイズだけでなく、車間距離や背後の幅も考慮する必要があります。一般的には、車間距離は60cm以上を確保する必要があります。
ドアを全開にしても隣の車に接触しない距離を確保するなら、約90㎝以上の車間が必要です。
背後の幅は、駐車している車両と後ろの壁や塀との間の距離です。幅を60cm以上確保すれば、余裕を持って駐車できます。トランクの開閉ができるだけのゆとりを背後に確保すると、利用者の利便性は、さらに高まるでしょう。
レイアウト別に駐車スペースを変える
駐車場のレイアウトには、縦列駐車、並列駐車、直角駐車などがあります。それぞれのレイアウトに応じて、駐車ますのサイズや車路の確保に注意しましょう。
縦列駐車 | ・駐車スペースの奥行きを長くとる必要がある ・奥行6m以上を確保 |
---|---|
並列駐車 | ・駐車スペースの幅を確保する必要がある ・幅3m以上を確保 |
直角駐車 | ・幅と奥行きの両方を確保する必要がある ・幅2.5m×奥行5m以上を確保 |
ニーズに合わせてレイアウトする
レイアウトを決める際は、軽自動車のスペースを効率的に設置して、駐車効率がよくなるよう工夫しましょう。 軽自動車の利用者が多い地域であれば、軽自動車のスペースを少し多めにとっても問題ありませんが、ワンボックスが多い地域であれば利便性が悪くなってしまいます。 また、障がい者用駐車スペースを出入り口付近に確保することも必要です。ユーザー層や地域的なニーズを考慮したうえで、効率的なレイアウトにしましょう。
バリアフリーに配慮をする
バリアフリー新法の施行により、障がい者用駐車スペースの設置が義務化されました。
体が不自由な人が利用可能な駐車ますを出入口や施設の近くで、かつ歩行距離が短い場所に配置しましょう。車いす利用者用の駐車スペースや通路に対する条件は、以下のとおりです。
● 駐車ますの幅:3.5m以上
● 駐車ますから出入口の通路の幅員:1.75m以上
● 斜路を設ける場合の勾配:12分の1以下(高低差が16㎝以下の場合は8分の1)
ほかにも、誘導路や標識をわかりやすくするなどの工夫も重要です。
使いやすい駐車場は寸法の設定が重要
駐車場の建築には、国土交通省が定めた寸法をクリアするだけでなく、利用者の利便性を考えたゆとりやレイアウトにも対応する必要があります。自走式立体駐車場の場合、適切な車路の幅や駐車しやすいレイアウトなど、いかに効率のよいスペースの設定をするかが重要です。
国土交通大臣認定駐車場stageWは、自走式立体駐車場の建築に特化したメーカーです。各種法令への対応や手続きなどもお任せください。最適な設計から建築後の運営まで、ご相談いただけます。自走式立体駐車場の建築を検討している事業者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。