バリアフリー新法とは?駐車場建設における法対応と注意点について

近年、高齢化社会の進展や障がい者権利の向上に伴い、バリアフリー化への関心が高まっています。
駐車場においても例外ではなく、バリアフリー新法の施行により、利用者にとって使いやすい駐車場の整備が求められています。
この記事では、バリアフリー新法の概要、駐車場建設における注意点、そして認定制度について詳しく解説します。
駐車場の新設や改築を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

バリアフリー新法とは

バリアフリー新法とは

バリアフリー新法について以下の5点にまとめました。

● バリアフリーとは
● バリアフリー新法の概要
● 適合義務と努力義務
● 義務基準と誘導基準
● バリアフリー新法と立体駐車場との関係

それぞれ詳しく見ていきましょう。

バリアフリーとは

バリアフリーとは、高齢者、障がい者、妊婦等を含むすべての人が、できる限り自立して、安全かつ快適に生活できる環境を実現しようとする考え方です。単に物理的な障壁を取り除くだけでなく、心理的・制度的・社会的障壁も含めて取り除くことを意味します。
近年、高齢化社会の進展や障がい者の人権意識の高まりを受け、バリアフリー化への動きが進んでいます。とくに公共施設や商業施設においては、利用者誰もが安心して利用できる環境づくりが求められているのです。 具体的には、段差や傾斜のない通路、車椅子対応のトイレやエレベーター、点字表示などです。さまざまな障壁を取り除くことで、誰もが安心して暮らせる環境の実現を目指します。

バリアフリー新法の概要

バリアフリー新法は、以下のふたつの法律が統合・拡充したものです。

● 『高齢者、身体障がい者などが円滑に利用できる特定建築物の建築に関する法律(ハートビル法)』(平成6年)
● 『高齢者、身体障碍者などの公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)』(平成12年)

上記の法律が統合され、平成18年12月に『高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律』として施行されました。

主な変更点は以下のふたつです。

● 対象者の拡充:身体障がい者、知的・精神・発達障害などのすべての障がいを持つ人が対象に
● 対象施設の拡充:駐車場、路外駐車場も対象内に

これまで、対象範囲が公共交通機関や道路だけだったものが、路外駐車場、公園、福祉輸送車両まで拡充されています。また、不特定多数の人間が利用する床面積2,000㎡以上の建築物、 または高齢者や障がい者などが利用する建築物も対象となりました。具体的には、病院・百貨店・ホテル・老人ホーム・美術館などです。

参照:国土交通省|バリアフリー法とは

適合義務と努力義務

建築物などにおけるバリアフリー化については、適合義務と努力義務の2種類が定められています。それぞれの内容を以下の表にまとめました。

項目適合義務努力義務
対象となる建築物特定建築物(延床面積1,000㎡以上で不特定かつ多数のものが利用する施設)特定建築物(延床面積500㎡以上)
一般建築物
内容建築物移動等円滑化基準
建築物移動等円滑化誘導基準
建築物移動等円滑化誘導基準
義務必ず満たさなければならないできる限り満たすように努める
違反した場合罰則行政指導

建築物移動等円滑化基準とは、出入口、廊下、階段、エレベーター、トイレ等に関するバリアフリーの義務基準となるものです。 守るべき最低限の内容として、法令第10条~第23条に定めてあります。
建築物等円滑化誘導基準は、視覚障がい者等が円滑に利用しやすいように誘導すべき構造や配置に関する基準となるものです。 特定建築物や一般建物が対象のため、義務の対象にはなっていませんが、努力義務が求められています。
適合義務は、法律で定められた基準を満たさなければならず、違反すると罰則が科されます。

義務基準と誘導基準

バリアフリー法によるバリアフリー化の基準には「建築物移動等円滑化基準」と「建物移動等円滑化誘導基準」があると上述しました。 「建築物移動等円滑化基準」は、守るべき最低限の基準、「建物移動等円滑化誘導基準」は望ましい基準です。
義務基準と誘導基準の例を以下の表にまとめました。

対象箇所建築物移動等円滑化基準建物移動等円滑化誘導基準備考
出入口の幅80cm以上90cm以上直接地上に通じる出入口は120cm以上
廊下等の幅120cm以上180cm以上
傾斜路の手すり片側設置両側設置低位部分は適用除外
傾斜路の幅120cm以上150cm以上状況により緩和・適用除外あり
エレベーター(出入口の幅)80cm以上※190cm以上※3※1:高齢者・障がい者などが利用する居室にいたる1以上の経路に関わる基準
エレベーター(かごの幅)140cm以上※1.2160cm以上※3※2:2,000㎡以上の建物
※3:不特定多数が利用し必要階に停止する1以上のもの
乗降ロビーの広さ150cm角以上180cm 角以上※3
車椅子用便房建物に1以上各階に原則2%以上
オストメイト対応水洗器具を設けた便房の数建物に1以上各階に1以上

そのほかにも、階段・ホテルの客室・敷地内の通路・駐車場・標識・室内設備などに関わる基準があります。

参照:国土交通省|バリアフリー法の概要について

バリアフリー新法と立体駐車場との関係

バリアフリー新法と立体駐車場との関係

立体駐車場はバリアフリー法の対象となったため、新法に対応した駐車場作りが必須です。きちんとバリアフリー新法に対応することで、以下のような効果が期待できます。

● 高齢者や障がい者の移動を円滑にし、社会参加促進に貢献できる
● すべての人が使いやすい環境づくりに貢献できる
● 高齢者や障がい者を含む幅広い層の利用を促進することで経済効果がある
● 社会貢献への意識の高さをアピールでき企業イメージアップにつながる

バリアフリー新法に対応するためには、以下のような対策が必要です。

● 車椅子同士がすれ違える通路の確保する
● サイン看板を見えやすい位置に設置する
● 身体障がい者用の駐車ますを設ける

駐車場に関する基準や注意点に関しては、次の章で詳しく解説します。

駐車場建設に関連するバリアフリー新法の基準や注意点

駐車場建設に関連するバリアフリー新法の基準や注意点

駐車場建設を検討する際に押さえておくべきバリアフリー新法の注意点は以下のとおりです。

● 設置基準
● 設置台数
● 幅・位置・表示方法
● 認定申請
● 認定を受けるメリット

それぞれ詳しく見ていきましょう。

設置基準

車いす使用者用駐車スペースの設置基準は、面積によって条件があります。不特定多数の人が利用する駐車場を新設する場合は、以下のような基準です。

駐車場の種類条件
平面(青空)駐車場駐車スペースの面積合計が500㎡以上
建築物である駐車場延べ床面積が2,000㎡以上
建物に附属する駐車場建物の延べ床面積が2,000㎡以上

以上の条件に当てはまる場合、幅が3.5m以上の駐車スペースを1箇所以上設置します。そのほか特定公園施設の駐車場や特定道路に設けられている駐車場も対象です。

参照:国土交通省|車椅子使用者用駐車施設等のハードに係る現行制度と検討の進め方について

設置台数

車いす使用者用駐車スペースは、建物に附属する駐車場や路外駐車場に設置する義務があります。

全駐車台数200以下当該駐車台数の2%以上
全駐車台数200以上当該駐車台数の1%+2

設置台数の必要数を、計算すると以下のとおりです。

駐車場の規模必要台数
~50台1台
51~100台2台
101~150台3台
151~200台4台
201~300台5台

ぜひ参考にしてください。

参照:国土交通省|バリアフリー法の概要

幅・位置・表示方法

各施設のバリアフリー駐車場の設置基準は、おおむね以下のとおりです。

位置表示
建物に付随する駐車場350cm以上利用居室までの経路の長さができるだけ短くなる位置車施設の付近の見やすい位置に、当該施設があることを表示する標識を、内容が容易に識別できるように設ける
路外駐車場350cm以上経路の長さができるだけ短くなる位置に設ける車いす使用者用駐車施設又はその付近に、路外駐車場車いす使用者用駐車施設の表示をする
都市公園350cm以上ガイドラインに記載車いす使用者用駐車施設又はその付近に、車いす使用者用駐車施設の表示をする
道路に附帯する駐車場350cm以上歩行者の出入り口からの距離ができるだけ短くなる位置に設ける障害者用である旨を見やすい方法により表示する

参照:国土交通省|車椅子使用者用駐車施設等のハードに係る現行制度と検討の進め方について

認定申請

駐車場を設置・運営する場合は、駐車場法とバリアフリー新法(第17条第1項)に基づく届出が必要です。届け先は、各市町村の駐車場法担当窓口です。書類の提出方法は二通りあります。

【バリアフリー新法第12条による届出に必要な書類】
● 特定路外駐車場設置(変更)届出書
● 技術的基準チェックリスト

【「バリアフリー新法第12条のただし書き」による届出方法で、駐車場法の届出書類にバリアフリー新法の書類を添付して提出する方法】
● 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律第12条第1項ただし書きに基づく、路外駐車場設置(変更)届出書」に添付する書面
● 術的基準チェックリスト

以上の申請内容が一定の基準に適合すると認定されます。

認定を受けるメリット

バリアフリー法第17条第1項により、一定の基準(建築物移動等円滑科誘導基準)を満たせば、認定申請が可能です。審査の結果、認定されると「確認の特例」や「容積率の特例」などが受けられます。

手続きの流れは以下のとおりです。

1. 事前相談
2. 事前協議(協議資料の提出)
3. 認定申請(認定申請書の提出)
4. 認定通知書発行

工事が完了した時には、工事完了報告書と認定銘板交付請求書を提出し、完了検査を受けます。
認定審査には、最低でも1か月が必要です。(各種書類は、駐車場建設予定の地域自治体のホームページからダウンロードできます。)

認定による具体的なメリットは以下のとおりです。

● 認定マークの表示(第20条)
● 容積率の特例(第19条)
● 税制上の特例措置
● 低利融資

認定マークは、体の不自由な人に配慮した駐車場の証明となり、企業ブランディングにもプラスとなるでしょう。 また、容積率の特例として、バリアフリー対応のために増えた面積を延べ床面積に含めないなどの一定の範囲の緩和も受けられます。

そのほかにも税制上の特例として、昇降機を設けた2,000㎡以上の認定建築物(特別特定建築物に限られます)は、所得税、法人税の割増償却(10%、5年間)が可能です。 さらに、日本政策投資銀行や中小企業金融公庫などから低利の融資が受けられるなどの優遇もあります。

各自治体によって、受けられる優遇が異なる場合もあるので、詳しくは駐車場を設置予定の自治体の情報を確認しましょう。

バリアフリー新法への対応もstageWにお任せください

バリアフリー新法への対応もstageWにお任せください

駐車場建設にも、バリアフリー新法への対応が求められています。ただし、法令や特例の詳細を把握し、必要な手続きを進めていく必要があります。そのひとつひとつに、もれなく対応していくのは骨の折れる作業といえます。

stageWでは、長年の立体駐車場建設の実績があり、各種法令への対応や手続きも代行しております。企画・設計・建設・点検・保守まで一気通貫でお任せいただけるので、ご安心ください。無料で相談も可能ですので、自走式立体駐車場の建設を検討しておられる事業主様は、お気軽にお問い合わせください。


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