機械式駐車場の仕組みや利用注意点を解説|事故例やガイドラインも紹介

限られた土地を有効活用できる機械式駐車場。しかし、その仕組みや利用の注意点を知らないと、思わぬ事故に繋がる恐れもあります。
近年では、安全基準の強化や新しい技術の導入など、機械式駐車場を取り巻く環境も変化しています。

本記事では、機械式駐車場の種類や仕組み、そして近年問題視されている事故について詳しく解説します。
機械式駐車場のついてもご紹介するので、マンション選びや駐車場の利用を検討している方は必見です。

機械式駐車場の種類と仕組み

機械式駐車場の種類と仕組み

機械式駐車場は、限られたスペースに多くの車を収めることができるため、都市部を中心に設置されています。その仕組みは大きく分けて以下の4種類に分類されます。

● 二段式・ピット式
● 昇降横行式
● 垂直循環方式
● エレベーター方式

それぞれ詳しく見ていきましょう。

二段式・ピット式

最も一般的なタイプで、パレットと呼ばれる台車に乗せた車を、昇降機で上下に移動させて収納します。 構造がシンプルで、機械式駐車場の中では比較的安価で設置可能です。操作もそれほど難しくなく、多くのマンションなどで採用されています。

昇降横行式

パレットを横方向に移動させて駐車する方式で、パズル式ともいわれています。出庫したい車両の番号を入力すると、パレットがその車両の場所まで移動し、出庫口まで運んでくれる仕組みです。 二段式に比べて奥行きが必要ですが、建物の形状や敷地条件に合わせてレイアウトが可能です。そのため、駐車スペースを効率的に利用できます。

垂直循環方式

パレットを垂直方向に回転させながら上下に移動させる方式です。パレットは円形または長円形に配置され、連続して循環します。 まるで観覧車のようにパレットが動き、車両を運ぶイメージです。地上だけでなく地下にも設置できるため、立体的にスペースを活用でき、高層ビルなどによく見られます。

エレベーター方式

エレベーターで車を垂直方向へ上下させる方式で、限られた土地を有効活用できます。 他の方式に比べて大規模な装置が必要ですが、構造は比較的シンプルです。稼働時の騒音が少なく、居住環境にも配慮できるのがメリットです。

機械式駐車場の事故について

機械式駐車場の事故について

機械式駐車場は、便利な一方で、事故が発生するリスクも潜んでいます。機械式駐車場で起こる事故の特徴について3つのポイントにまとめました。

マンション駐車場での発生率が高い

機械式立体駐車場の安 全対策に関するガイドライン


引用:「機械式立体駐車場の安 全対策に関するガイドライン」の手引き

国土交通省がまとめた機械式駐車場の10年間の事故事例をみてみると、マンション駐車場での事故発生が55%と最も多くなっています。主な原因トップ3は以下となっています。

● 装置内に人がいる状態で機械を作動
● 転倒・落下・侵入
● 装置に車をぶつける

マンションに設置されている場合は、専任の管理者がいないケースが多く、住民自身が機械を作動させます。 子どもが不用意に装置内に立ち入った、安全確認を十分に行わず機械を動かしたなど、ちょっとした不注意から事故に繋がってしまうケースが多い状況です。

死亡事故など重傷事故が発生しやすい

国土交通省がまとめた9年間の事故データ32件の死亡・重傷事故のうち12件が死亡事故でした。大きな力がかかる装置で動かすため、死亡事故につながりやすいといったデメリットがあります。 とくに駐車場専任の管理人がいないマンションに設置された駐車場などで事故が起こりやすいため、予防策として安全策や赤外線センサーなどの設置が義務付けられるようになりました。

おもな事故事例には、以下のようなものがあります。

● 乗降室内の隙間から子どもが落下し負傷
● 装置内に子どもが残っていたにもかかわらず確認せず装置を稼働させ危機に挟まれ死亡
● 前の利用者が装置内に閉じ込められて負傷
● 安全確認不足による利用者が装置に挟まれ死亡

上記のような事故を防ぐためには、装置内には1人しか入らない、装置内に人がいないことを確認するなど、慎重な安全確認が必須です。

安全基準が厳しくなっている

機械式立体駐車場の安 全対策に関するガイドライン


画像引用:「機械式立体駐車場の安 全対策に関するガイドライン」の手引き

重大な事故の事例から、機械式駐車場の安全基準は年々厳しくなってきています。また、定期的な点検や安全装置の設置が義務化されるなど、安全性向上に向けた取り組みが進められています。 死亡・重傷事故を防ぐために、ガイドライン「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」 が作成され、講じるべき安全対策基準が明確になりました。 現在では、国土交通大臣の認定を受けた装置でなければ、機械式駐車場の設置は認められません。

その要件としては以下のようなものがあります。

● 周囲に柵、前面ゲートを設置
● 装置内に人感センサーを設置
● 反射鏡や照明装置を設置
● 操作には暗証番号を入力するよう設定
● 非常停止ボタンを設置
● カメラやモニターを設置
● 機器の旋回部分を明示

簡単に装置内に侵入できない仕組みや安全確認のための装置の設置など、求められる要件が増えています。

機械式駐車場を利用する際の注意点

機械式駐車場を利用する際の注意点

機械式駐車場を設置する側が安全対策するのはもちろんですが、利用する側もさまざまな注意が必要です。機械式駐車場を利用する際の注意点を以下の5つにまとめました。

● サイズ制限に気をつける
● 事故に気をつける
● 維持管理費のコストを考慮する
● 自然災害に気をつける
● 利用者が少なくなると負担増になる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

サイズ制限に気をつける

機械式駐車場にはサイズ制限があるため、駐車できる車が限られています。機械式駐車場は「駐車場法施行令第15条」に構造や設備に関する基準が定められており、その基準は以下のとおりです。

駐車スペースの高さ1.8m以上
人が入らない駐車スペースの高さ1.6m以上

駐車場法の基準に合わせて設置される機械式駐車場が多いため、サイズオーバーの車は駐車可能かを事前にチェックする必要があります。 とくに、近年人気のSUVやワンボックスカーは1.6m以上の車高のものが増えているため、必ず事前にサイズチェックをしましょう。

参照:国土交通省|駐車場法施行令第15条の認定基準について

事故に気をつける

大型装置に挟まれると重傷もしくは死亡事故につながりやすいため、安全確認は重要です。確認すべきポイントとしては以下のとおりです。

● 周囲にほかの人がいないか確認
● 運転者以外は入庫する前に降車する
● 子どもやペットは装置に近寄らせない

できれば、子どもやペットを乗せたまま装置内に侵入しないのが望ましいのですが、対応できる大人が一人しかいない場合は難しいかもしれません。その場合の対策も考える必要があります。

維持管理費のコストを考慮する

機械式駐車場を安全に運営するためには点検や保守が欠かせません。おもに以下のような費用の負担がかかります。

● 点検・保守費用
● 機械を動かす電気代
● 管理者を常駐させる場合の人件費

点検周期は、部品や装置ごとに、毎月・年4回・半年に1回・年1回と決まっています。 安全に利用するためには、定期点検が欠かせませんが、その分コストもかかります。利用者には、コスト分の利用料がかかってくることも考慮する必要があります。

参照:国土交通省「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」

自然災害に気をつける

機械式駐車場は、台風や地震などの自然災害に弱いという弱点があります。水没や停電により、出入庫できなくなる危険性があるため、対策を考えておきましょう。 とくに、水害により地下ピットや1階部分が水没することもあるため、台風前には、避難できる自走式駐車場などを確保しておくなどの対策が必要です。

利用者が少なくなると負担増になる

マンションの機械式駐車場は、住民で共有・共同管理する設備です。そのための費用を利用住民で均等に負担しています。 そのため、駐車場を利用する世帯が減ると、契約者一人分の負担が増えてしまうのです。 高齢化により免許返納して自家用車を手放す世帯が増える可能性も想定されるため、利用者が減った場合の稼働率や一人あたりの負担額などを試算し、 必要な場合は建て替えや外部の利用者への貸し出しなども検討してみましょう。

自走式駐車場へ建て替えも検討してみよう

自走式駐車場へ建て替えも検討してみよう

少ない敷地でも効率よく駐車台数を確保できる機械式駐車場は、マンション駐車場として人気です。 しかし、管理コストがかかったり、一定の事故リスクが想定されたりするため、機械式駐車場を平面式駐車場や自走式駐車場に建て替えるケースもあります。

stageWは、国土交通大臣認定の自走式立体駐車場建設メーカーです。豊富な実績により、企画・申請・設計・工事・メンテナンスまで一気通貫でご依頼いただけます。 自走式立体駐車場建設を検討している事業者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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