マンションや商業施設などで見かける機械式駐車場。限られたスペースを有効活用できる便利なシステムですが、その寿命は一体どれくらいなのでしょうか?
機械式駐車場の耐用年数は、建物の種類や設備の種類によって異なり、一概に「◯年」とは言えません。
しかし、適切なメンテナンスを行うことで、その寿命を延ばすことは可能です。
この記事では、機械式駐車場の耐用年数について詳しく解説し、寿命を縮めないためのコツや、寿命を迎えた際の次の選択肢についてご紹介します。
機械式駐車場のオーナー様や、マンションの管理組合の方、そしてこれから機械式駐車場の導入を検討されている方など、多くの方にとって役立つ情報が満載です。
ぜひ最後までご覧ください。
機械式駐車場の耐用年数とは

機械式駐車場の耐用年数について、さまざまな角度から整理してみましょう。
● 耐用年数の定義
● 法定耐用年数は10年
● 建物部分と機械部分の耐用年数の差
● 設備の種類による耐用年数の差
それぞれ詳しく見ていきましょう。
耐用年数の定義
最初に耐用年数と耐久年数を区別しなければなりません。一般的に耐久年数とは、商品の製造元などが調査・実験結果をもとに、機能面で問題なく使用できると公示された期間のことです。
それに対して耐用年数は、法律や会計基準で定められた概念であり、資産の価値が減耗していく期間を数値化したものを指します。
耐用年数は減価償却費を計算する際に必要とし、その年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)により定められています。
参照:減価償却資産の耐用年数等に関する省令
法定耐用年数は10年
減価償却資産の耐用年数等に関する省令によると、機械式駐車場は「機械及び装置の耐用年数表(別表第二)のカテゴリー55「前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区分によらないもの/機械式駐車設備」です。
その耐用年数は10年となっています。
これは、10年にわたって建設にかかった費用を会計上で経費計上できることを意味します。実際に使用できる年数とは違うため、当然10年以上使用し続けることは可能です。
機械式駐車場においては、建物の構造部分と機械設備部分で耐用年数が異なります。それぞれの劣化具合によって、メンテナンスしていかなければなりません。
そのため、オーナーや管理者は、会計上は耐用年数、安全に運用するためには耐久年数を把握し、適切なメンテナンス計画を立てましょう。
参照:減価償却資産の耐用年数等に関する省令|機械及び装置の耐用年数表(別表第二)
建物部分と機械部分の耐用年数の差
建物の構造部分は、コンクリートや鉄骨で構成されており、比較的耐久性が高い一方、機械設備部分は、モーターや制御装置など、摩耗や故障が起こりやすい部品で構成されています。
そのため、機械設備部分の耐用年数は、建物の構造部分よりも短いのが一般的です。
建物部分 | 耐用年数 |
---|---|
屋根がない場合 | 15年 |
木造 | 15年 |
鉄筋コンクリート | 38年 |
レンガ・ブロック | 34年 |
参照:主な減価償却資産の耐用年数表
機械部分の耐用年数は10年ですが、建物部分の耐用年数は最長38年と長めです。
設備の種類による耐用年数の差
機械式駐車場には、様々な種類の設備が使用されています。それぞれの設備の構造や材質、稼働頻度によって、耐用年数は異なります。
経年劣化により性能が低下するため、故障する前に部品交換する必要があるのです。各設備の修繕周期については下記の表にまとめました。
対象設備 | 対象部位 | 修繕周期 |
---|---|---|
電動機 | 電動機、駆動軸、車輪、チェーン・スブロケット | 10年 |
電気部品 | 電気部品、落下防止装置 | 8年 |
制御基板 | 制御基板、昇降インバーター、リミットスイッチ | 5年 |
操作盤基盤 | 操作盤基盤(キースイッチ) | 4年 |
光電管 | 光電管 | 10年 |
塗装工事 | 柱、梁、バレット | 5年 |
保存状態や周辺環境によっても修繕周期は変化します。例えば、屋外に設置された設備は、風雨や直射日光の影響を受けやすく、屋内に設置された設備よりも耐用年数が短くなる可能性があります。
機械式駐車場の物理的な耐用年数(≒耐久年数)を左右する要因

機械式駐車場の物理的な耐用年数(≒耐久年数)を左右する要因について、以下の3つのポイントにまとめました。
● 屋内か屋外か
● 利用者数や使用頻度
● 部品の寿命
それぞれ詳しく見ていきましょう。
屋内か屋外か
機械式駐車場が屋内にあるか屋外にあるかによって、耐久年数は大きく変わってきます。 屋外の駐車場は、雨風や直射日光、温度変化などの自然環境に直接さらされるため、建物の劣化が早く進みがちです。特に、マンションに設置されている二段式や昇降横行式などは雨風にさらされているため、錆びによる老朽化が進みやすいでしょう。 一方、屋内の駐車場は、これらの外的要因から保護されているため、建物の寿命は比較的長くなります。
利用者数や使用頻度
利用者数や使用頻度も、耐久年数に影響を与える重要な要素です。利用者が多いほど、機械設備への負荷が増大し、摩耗や故障が起こりやすくなります。 また、利用者数自体は少なくても、頻繁に出入りが行われる場合は、部品の劣化速度が早まるでしょう。
部品の寿命
機械式駐車場を構成する部品には、それぞれ寿命があります。モーターや制御装置、チェーンなど、稼働する部品は特に摩耗が激しく、定期的な交換が必要です。 これらの部品の寿命が全体の耐久年数を左右することも少なくありません。さらに部品は、部品保有期間を意識しなくてはいけません。 部品保有期間とは、家電製品やOA機器などの製品の修理対応を行うために、メーカーがストックしておく部品の期間のことです。 一般的に5~7年のことが多く、交換したくても生産が中止されている場合も少なくありません。
機械式駐車場の耐久年数を伸ばす方法

機械式駐車場の耐久年数を短くしないための方法について、以下の4つにまとめました。
● 定期点検を欠かさない
● 部品を定期的に交換する
● 朽化のサインを見逃さない
● 保守保全を心がける
それぞれ詳しく見ていきましょう。
定期点検を欠かさない
機械式駐車場は、定期的に点検を行うことが重要です。
点検によって、早期に異常を発見し、故障を未然に防げます。また、点検記録を残しておくことで、設備の履歴管理を行い、より効率的なメンテナンスが可能です。
建築基準法第8条(維持保全)および国土交通省が発表した『機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン』によると、以下のとおり定期点検が推奨されています。
「装置の安全確保のための維持保全を行うこと。装置が正常で安全な状態を維持できるよう、機種、使用頻度等に応じて、1~3ヶ月以内に1度を目安として、専門技術者による点検を受け、必要な措置を講じること。」
引用:国土交通省|機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン
部品を定期的に交換する
機械式駐車場の部品は、経年劣化によって性能が低下します。そのため、定期的に部品を交換することが重要です。 特に、モーターや制御装置などは、故障すると駐車場全体が使用できなくなる可能性があるため注意が必要です。また、部品も製造から一定年数が経過すると、製造中止になる場合があります。 修理したくても修理ができない場合は、新しい機械にリニューアルする必要があるでしょう。
老朽化のサインを見逃さない
機械式駐車場が老朽化すると、様々なサインが現れます。異音、振動、動作の遅延、油漏れなどは、いずれも異常の兆候です。具体的には以下のようなものがあります。
● 異音や異常な振動
● 動作の遅延や停止
● 部品の破損や劣化
● 塗装の剥がれや錆
● 構造物の歪み
れらのサインを見逃さず、早めに専門業者に点検を依頼することが大切です。
保守保全を心がける
安全性を追求するためには「保守・保全に努める」という考え方が重要です。部品ごとの耐用年数を考慮して、故障前に交換することを「保全」といいます。
保全のためには、建築物等の性能や求められる機能を良好な状態に保つ努力が必要です。
国土交通省によると、保全のためには以下の7つのような具体的な努力が必要とされています。
引用:国土交通省中部地方整備局
1.保守
2.運転監視
3.警備
4.清掃
5.点検
6.改修
7.経常的修繕
保守とは建物の設備や機能を維持するために、点検や修理を行うことです。安全に運営するために、常に良い状態を保つための努力が必要といえます。
機械式駐車場の寿命が尽きたときの選択肢

機械式駐車場は、長年の使用や自然な劣化によって、その機能が低下し、やがて寿命を迎えます。
寿命が尽きた機械式駐車場に対して、どのような選択肢があるのか、以下の3つの選択肢を解説します。
● リニューアル
● 建て替え
● 撤去
それぞれ詳しく見ていきましょう。
リニューアル
機械式駐車場は、物理的には10年~15年程度が機械の寿命だといわれています。そのため、定期的に装置を取り換えて最新型に変えるリニューアルが必要です。
部分的な修繕により稼働が可能なうちは、劣化した機械部分やパレットを交換したり、塗装を塗りなおしたりすることで、再び使用することも可能ですが、法定耐用年数を超えてからは、機械全体を新しいものにリニューアルすることも検討しましょう。
リニューアルの場合、建物をそのまま活用する前提であれば建物分のコストを抑えることが可能ですが、機械式駐車場を入れ替えるのに多額の費用がかかります。
一般的に、1台あたりの購入金額が100万円~150万円ほどかかるといわれているため、見込まれる収益を算出し、リニューアルした場合にどれくらいの期間で回収できるのか、検討しておく必要があります。
建て替え
建て替えは、老朽化した機械式駐車場を完全に取り壊し、新しい駐車場を建設する方法です。 機械だけでなく建物自体も変更でき、耐震性や耐久性を高められるのがメリットです。一方で、大規模な工事が必要となるため、多くの費用と時間がかかります。 最近では、機械式駐車場から自走式立体駐車場へ建て替えるケースも少なくありません。 自走式駐車場は、メンテナンスに関するコストが、機械式駐車場と比べると格段に安くなるためです。また、利用者層の変化を機に建て替えるケースも増えています。
撤去
撤去は、機械式駐車場を完全に取り壊し、その場所に別の施設を建設したり、平面式駐車場として活用したりします。 撤去費用がかかりますが、別の施設にすることで利益率が高まったり、平面駐車場にして管理コストを最小限に抑えたりなどのメリットも想定されます。
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