近年、自走式立体駐車場への新規建設やリニューアル(建て替え)も増えていますが、どのような外壁を選択するかについては建設時の重要なポイントです。
外壁は、建物の安全性や美観性を保つうえで重要な役割を果たしています。
そこでこの記事では、自走式立体駐車場の外壁の役割と、施工時の注意点について詳しく解説します。
自走式立体駐車場の建設やリニューアル(建て替え)を検討されている事業者・マンション管理組合の方は、ぜひ参考にしてください。
自走式立体駐車場の特徴やメリットなどについては合わせて下記記事をご確認ください。
⇒自走式立体駐車場とは?種類・メリット
自走式立体駐車場の外壁の役割

自走式立体駐車場の外壁の役割は以下のとおりです。
● 安全性向上
● 耐久性確保
● 景観との調和
それぞれ順に解説していきます。
安全性向上
自走式立体駐車場の外壁は、建物内部の安全性を確保する役割を果たします。 特に、耐震性や耐風性などが求められます。外壁が担う安全性向上の役割について表にまとめました。
役割 | 詳細 |
---|---|
飛散防止 | 台風などの強風時に、内部の物が飛散するのを防ぎ、周辺への被害を抑える |
目隠し効果 | 内部の車両を外部から見えにくくし、プライバシー保護や防犯効果を高める |
侵入防止 | 不審者の侵入を防ぎ、セキュリティ向上に役立つ |
耐久性確保
自走式立体駐車場の外壁は、長期にわたって使用されるため、耐久性が求められます。耐久性のために必要な役割と詳細について表にまとめました。
役割 | 詳細 |
---|---|
風雨や紫外線からの保護 | ● 内部構造体を風雨や紫外線から保護する ● 劣化を防ぎ、建物の寿命を延ばす |
耐火性の確保 | ● 耐火性能を有する外壁材を使用する ● 火災時の延焼を防ぎ、安全性を高める |
塩害対策 | ● 海沿いの地域では、塩害による腐食に強い素材を使用する |
景観との調和
自走式立体駐車場の外壁は、建物の外観を形成するうえで重要な要素です。 周辺の景観と調和したデザインを採用すれば、街並みの美しさを保つのに役立ちます。また、色彩や素材の選択によっては、建物の個性を表現できます。 デザイン性の高い外壁は、駐車場のイメージアップにつながり、商業施設ではブランドイメージ向上にも寄与するでしょう。
環境への配慮
近年、環境問題に対する関心が高まっており、建築物においても環境への配慮が求められています。 自走式立体駐車場の外壁においても、省エネ性能やリサイクル可能な素材の使用などが検討されています。 ほかにも外壁が環境へ配慮できるポイントについて表にまとめました。
役割 | 効果 |
---|---|
騒音の軽減 | ● 遮音性能を有する外壁材を使用する ● 車両走行音などの騒音を軽減し、周辺環境への影響を抑える |
抑光制 | ● 内部照明が外部に漏れないように配慮する ● 光害を抑制する |
通風・採光の確保 | ● 通風や採光を確保し、内部環境を快適に保つ ● エネルギー消費を抑える |
緑化 | ● 壁面緑化を施す ● ヒートアイランド現象の緩和や、景観向上に貢献する |
主要な外壁材の比較

主要な外壁材は、金属系と樹脂系に分かれており、以下のようなものがあります。
● スチールパネル
● アルミパネル
● エキスパンドメタル
● 硬質塩化ビニル樹脂板
● ポリカーボネート板
● アクリル樹脂板
● 樹脂製ルーバー
それぞれ順に解説していきます。
金属系外壁
金属系外壁は、耐久性が高く軽量です。
スチールパネル
スチールパネルは、軽量で施工性に優れています。また、耐久性や耐候性も高く、メンテナンスが容易です。 薄くて軽量なため、建物への負担が少ないといったメリットがあるうえ、さまざまな形状に加工できるためデザインの自由度が高いのが特徴です。 一方、遮音性や断熱性は低い傾向があります。スチールパネルは、コストパフォーマンスを重視する場合や耐火性が求められる場合におすすめです。
アルミパネル
アルミパネルは、軽量で錆びにくく耐食性に優れています。加工性がよいため、デザインの自由度が高く意匠性もあります。 リサイクルしやすい反面、スチールパネルに比べて強度が劣り、熱膨張率が高いため、暑い地域には向いていません。 また価格も比較的高い傾向にあります。アルミパネルは、デザイン性を重視する場合や沿岸部など塩害が懸念される地域におすすめです。
エキスパンドメタル
エキスパンドメタルは、スチールパネルやアルミ板に切り込みを入れて引き伸ばし、網目状に加工したものです。 通風性・採光性に優れており、開放的な空間を演出できます。デザイン性が高く比較的安価ですが、強度・遮音性・断熱性の効果が低く、目隠し効果もあまりありません。 エキスパンドメタルは、通風・採光を確保したい場合やデザイン性を重視する場合におすすめです。
樹脂系外壁
樹脂系の外壁は、コストが低めでカラーバリエーションが豊富です。
硬質塩化ビニル樹脂板
硬質塩化ビニル樹脂板は、耐候性、耐水性、耐薬品性に優れ、軽量で加工しやすいのが特徴です。 比較的安価なため、コストを抑えたい場合に適しています。ただし耐熱性は低い傾向にあります。硬質塩化ビニル樹脂板は、目隠しパネルとしての使用に適しています。
ポリカーボネート板
ポリカーボネート板は、透明性が高く採光性に優れています。ガラスの約200倍の耐衝撃強度を持ち、ハンマーなどで叩いても割れにくいのが特徴です。 透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れた樹脂板ですが、対候性はやや低い傾向があります。 ポリカーボネート板は、採光性・視認性を重視する駐車場の外壁やセキュリティを重視する部位、屋根材などに適しています。
アクリル樹脂板
アクリル樹脂板は、透明性や耐候性に優れた樹脂板です。 光沢があり、ガラスに近い透明度を持ちます。 屋外での使用にも適していますが、衝撃性や対候性はポリカーボネート板にやや劣るため、採光性を重視する駐車場の外壁やデザイン性を重視する部位におすすめです。
樹脂製ルーバー
樹脂製ルーバーは、上記の樹脂などをルーバー形状に成形したものです。通風性や採光性に優れており、意匠性も高いといった特徴があります。 軽量で施工しやすい反面、遮音性や断熱性は低めです。 樹脂製ルーバーは、目隠し効果を調整したい場合に適しています。
自走式立体駐車場の外壁設計における注意事項

自走式立体駐車場の外壁設計における注意事項は以下のとおりです。
● 法令・規制の確認
● 通気性と採光性のバランス
● 防音性の考慮
● デザイン性の配慮
● 耐久性の追求
● コスト
● ライトグレア対策
それぞれ順に解説していきます。
法令・規制の確認
自走式立体駐車場の外壁設計においては、建築基準法や消防法などの法令および規制を遵守する必要があります。関連する代表的な法令を表にまとめました。
関連する法や条令 | 注意点 |
---|---|
建築基準法 | 構造、耐火、避難などに関する規定を遵守する |
消防法 | 消火設備、避難設備などに関する規定を遵守する |
各自治体の条例 | 景観条例、環境条例、駐車場条例など、各自治体の条例を遵守する |
通気性と採光性のバランス
自走式立体駐車場は、十分な通気と採光を確保する必要があります。 外壁の開口部や通気孔の配置、採光窓の設置などを適切に行いましょう。 内部の明るさを十分に確保すれば、照明に必要な電力消費を抑えられます。 また、夜間や天候の悪い日でも十分な照度を確保できるよう適切な照明器具を配置しましょう。 その場合、パンチングメタルやルーバーデザインの活用が有効です。
防音性の考慮
自走式立体駐車場は、ブレーキやアイドリング、タイヤのこすれる音(スキール音)などの騒音が発生しやすい施設です。 外壁の遮音性を高めることで、周辺環境への影響を軽減できます。 住宅地やマンションの横に設置されている場合は、周辺住民に配慮した騒音対策のための設計が重要です。
デザイン性の配慮
自走式立体駐車場の外壁は、建物の外観を形成するうえで重要な要素です。周辺の景観と調和したデザインを採用することで、街並みの美しさを保つことができます。 デザインに関して配慮すべきポイントは以下のとおりです。
配慮すべきポイント | 詳細 |
---|---|
周辺環境との調和 | 周辺の建物や街並みとの調和を考慮したデザイン、色彩、素材を選定する |
景観条例への適合 | 各自治体の景観条例に基づいたデザインとする |
独自性の表現 | 駐車場のコンセプトや特徴を表現した、オリジナリティのあるデザインにする |
素材の選定 | 建物のイメージやコンセプトに合った素材を選定する |
緑化 | 壁面緑化などを取り入れることで、景観の向上やヒートアイランド現象の緩和に貢献する |
耐久性の追求
自走式立体駐車場の外壁は、長期にわたって使用されるため、耐久性が求められます。 劣化しにくい素材を選び、適切なメンテナンスを行うことで、耐久性を向上させましょう。
耐久性の種類 | 詳細 |
---|---|
耐風性 | ● 高層の駐車場では風荷重の影響が大きい ● 風圧力に対する強度を確保し、強風による破損や飛散を防ぐ |
耐久性 | ● 長期使用に耐えうる耐久性のある材料を選定する ● 汚れが付きにくくメンテナンスが容易な素材を選定する |
防水・排水設計 | ● 防水処理をして雨水の侵入を防ぐ ● 排水経路を確保する |
コスト
コストは建設費だけでなく、次の3つのコストを意識しましょう。
コスト | 内容 |
---|---|
イニシャルコスト | ● 建設費 ● 予算内に抑えるために、適切な構造、材料、工法を選定する |
ランニングコスト | ● メンテナンス費用や光熱費 ● 清掃や点検もランニングコストの一部 |
ライフサイクルコスト | ● 解体までを含めたもの |
ライトグレア対策
ライトグレアとは、光源からの直接的な強い光、または反射した光が目に入り、不快感や見えにくさを引き起こす現象です。 照明が周辺住民に迷惑をかける可能性があるため注意が必要です。 ライトグレアには、照明器具などの光源から直接入る強い光が原因の場合と、太陽の光や照明の光が外壁に反射して目に入る2つの原因があります。 対策として、照明の角度や配置、遮光板の設置などを検討しましょう。 外壁の光反射でライトグレアが発生する原因は、塗料に光沢度の高いものや金属系の顔料を使用しているためです。 白や淡い色も強い反射を引き起こします。日当たりのよい立地の場合は特に注意しましょう。
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