自走式立体駐車場の耐震性能とは?地震基準や施工方法を解説

「自走式立体駐車場の建設を検討しているが、大きな地震が来ても大丈夫なのだろうか?」
「今使っている立体駐車場、もし大地震が来たら倒壊しないか心配……」
「地震に強い駐車場を建てる基準や注意点は?」
自走式立体駐車場の建設にあたり、耐震性に関する不安や疑問をお持ちではないでしょうか。
特に地震の多い日本では、建物の耐震性能は最も重要な要素の一つです。
万が一、地震によって駐車場が損壊・倒壊するようなことがあれば、人命に関わる大きな事故に繋がる可能性もあります。
この記事では、自走式立体駐車場に求められる耐震性能の重要性から、建築基準法で定められている具体的な耐震基準(旧耐震基準、新耐震基準、2000年基準)に加え、
地震に強い駐車場を実現するための設計、施工上のポイント、具体的な施工方法までを詳しく解説していきます。
自走式立体駐車場の耐震性に関する正しい知識が身につき、安心して駐車場の建設や利用を検討できるよう、
ぜひ最後までご覧いただき、疑問や不安の解消にお役立てください。

自走式立体駐車場の耐震性能の重要性

自走式立体駐車場の耐震性能の重要性

自走式立体駐車場は、商業施設やマンション、オフィスビルに設置されることが多く、多くの利用者が日常的に使用しています。 しかし、地震発生時に駐車場が倒壊すれば、車両の損傷や人的被害が発生するリスクがあります。
実際に、過去の大地震では耐震性の不足が原因で自走式立体駐車場が倒壊した例もあり、耐震対策の重要性が強く認識されるようになりました。
地震大国日本において、自走式立体駐車場の地震リスクは以下のとおりです。

● 車両の落下
● 構造物の倒壊による人命の危険性
● 損傷による経済的損失

過去の大地震では、耐震性の低い自走式立体駐車場の被害事例が報告されています。 例えば、国立研究開発法人建築研究所 の調査報告によると、東日本大震災において、鉄骨造2階建て自走式立体駐車場の1階で柱脚部のコンクリート破損やブレースの座屈といった被害が確認されています。 大きな地震により頑丈な鉄骨も歪むことがあります。これから南海トラフ地震のような大規模な地震が来ると想定して、耐震対策にはしっかり取り組みましょう。

自走式立体駐車場の耐震基準とは?

自走式立体駐車場の耐震基準とは?

日本で建物を建てる際には、建築基準法で定められた耐震基準を満たす必要があります。 建築法基準は、過去の地震被害の教訓をもとに改正が重ねられてきました。ここでは、自走式立体駐車場に関わる主な耐震基準について解説します。

● 旧耐震基準(1981年以前)
● 新耐震基準(1981年以降)
● 2000年基準

それぞれ順に見ていきましょう。

旧耐震基準(1981年以前)

旧耐震基準は、1950年の建築基準法制定から1981年5月31日までの間に建築確認申請が行われた建物に適用されていた耐震基準です。 震度5程度の地震(中地震)で建物がほとんど損傷せず、震度6強~7程度の大地震で崩壊・倒壊しないことを目標とされていました。
旧耐震基準では、建物自体の重さ(自重)の20%に相当する水平方向の力(地震力)が加わっても、柱や梁などの構造部材が耐えられる(許容応力度以下である)ように設計されていました。 この計算は「許容応力度計算」と呼ばれ、主に地震の力を静的な荷重として捉え、部材が耐えられるかを確認するものです。 建物の形状や規模に応じて必要な壁の量や柱の太さ、鉄筋コンクリートの強度などが定められていましたが、大地震時の建物の変形や粘り強さについては、明確な規定がありませんでした。
現在ではより厳しい基準である「新耐震基準」への適合が重要視されています。 もし旧耐震基準で建てられた自走式立体駐車場を所有している場合は、耐震診断を受け、必要に応じて耐震補強を行うとよいでしょう。

新耐震基準(1981年以降)

新耐震基準は、1978年に発生した宮城県沖地震の甚大な被害を教訓として、1981年6月1日から施行されました。 この基準の目標は、震度5程度の中地震ではほとんど損傷せず、震度6強から7程度の大地震でも人命に関わるような倒壊・崩壊をしないことです。
旧耐震基準で定められていた「許容応力度計算(一次設計)」に加え、「保有水平耐力計算(二次設計)」が導入されました。 一次設計では中地震に対する安全性を確認し、二次設計では大地震に対する安全性を確認します。
保有水平耐力計算では、建物が大地震の力に対してどれだけ耐えられるか(保有水平耐力)を算出し、地震時に必要とされる耐力(必要保有水平耐力)を上回っているかを確認します。保水力が高いと大きな揺れに対しても粘り強くなるのです。 想定される地震の力も、旧耐震基準より大きく設定されており、旧耐震基準に比べて大地震に対する安全性が大幅に向上しています。主な材料は、鉄骨や鉄筋コンクリートです。

地域との連携と地域住民への周知

自走式立体駐車場を避難所として有効に活用するためには、自治体や地域コミュニティとの連携が不可欠です。 次のような取り組みで地域住民に周知させていきましょう。

● 自走式立体駐車場が避難所であることを地域住民に周知させる
● 避難経路や避難所、緊急連絡先などを定期的に周知させる
● 地域住民向けの防災訓練を実施して避難方法や注意点などを共有する

周知活動は、数か月に1回もしくは毎年など、一定の頻度で定期的に行いましょう。

2000年基準

2000年基準は、1995年に発生した阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、新耐震基準をさらに強化・明確化するために2000年6月1日に施行された基準です。 新耐震基準(1981年基準)が基本的な考え方ですが、特に木造建築物に関する規定が大きく見直されました。 地盤調査の事実上の義務化や、耐力壁の配置バランス、接合部の仕様などが具体的に規定されています。
2000年基準では、新耐震基準で導入された保有水平耐力計算の重要性が改めて確認されました。 特に、大規模な建築物や高層建築物においては、実際の地震波形を用いて建物の揺れ方をシミュレーションする「時刻歴応答解析」などの高度な動的解析が求められる場合があります。
また、自走式立体駐車場特有の基準として、建築基準法に基づく用途制限、高さや面積の制限、車路の幅や高さ、防火・避難、換気・照明に関する規定なども遵守しなければなりません。 さらに、国土交通大臣による認定制度により、耐火性能や耐震性能が保証され、設計・施工の合理化が図れる場合もあります。

耐震性を高めるための設計・施工のポイント

耐震性を高めるための設計・施工のポイント

建築基準法で定められた耐震基準を満たすことはもちろん重要ですが、さらに高いレベルの耐震性を確保するためには、設計段階と施工段階の両方で注意すべきポイントがあります。

● 設計段階でのポイント
● 施工段階でのポイント

それぞれ順に見ていきましょう。

設計段階でのポイント

設計段階では、建設予定地の地盤特性を正確に把握するための適切な地盤調査が不可欠です。 ボーリング調査などにより、地盤の強度や地層構成、液状化のリスクなどを詳細に調べ、結果に基づいて最適な基礎形式(直接基礎や杭基礎など)を選定します。
次に、地震の揺れ(地震力)を建物全体で効率よく受け止め、分散させるための構造設計を行います。柱や梁の配置はもちろん、必要に応じてブレース(筋交い)や耐震壁を設けたり、揺れを吸収する耐震スリットを設置したりしましょう。
使用する鋼材やコンクリートは高強度な材料を選定し、部材の接合部なども含めて適切に配置・設計することが求められます。 建物同士がぶつかるのを防ぐエキスパンションジョイントの設置や、照明器具、配管、消火設備といった建築設備の耐震対策も忘れてはなりません。

施工段階でのポイント

設計図通りに建物を正確に造り上げることが、計画された耐震性能を確実に発揮させるための鍵となります。 施工段階では、設計内容を忠実に再現するための高い技術力と厳格な品質管理体制が不可欠です。 鉄骨造の場合、部材同士を繋ぐ溶接やボルト接合の品質が構造強度に直結します。 熟練した技術者による高品質な溶接・接合技術を徹底し、適切な検査を行うことで安全を保障しましょう。 鉄筋コンクリート造の場合は、鉄筋の正確な配置(かぶり厚さ、間隔など)と、高品質なコンクリートの打設・養生が求められます。これらが不適切だと、想定された強度が得られません。

地震に強い自走式立体駐車場の施工方法

地震に強い自走式立体駐車場の施工方法

設計図に基づき、実際に地震に強い自走式立体駐車場を建設するための具体的な施工方法には、いくつかの重要な工程があります。

● 地盤調査の実施
● 基礎工事の強化
● 適切な接合方法の採用
● 厳格な品質管理

これらの工程を確実に実施することが、建物の耐震性を確かなものにします。

地盤調査の実施

地震に強い建物を建てるための最初の重要なステップが、建設予定地の詳細な地盤調査です。 地盤調査では、ボーリング調査や標準貫入試験、表面波探査など、複数の方法を組み合わせます。調査では、以下のような項目があります。

● 地盤の強度
● N値
● 地層の構成
● 地下水位
● 液状化リスク

もし調査の結果、地盤の強度が不足していたり、液状化のリスクが高いと判断されたりした場合は、地盤改良工事が必要となります。 地盤改良には、セメント系の固化材を地盤に注入して固める柱状改良工法や深層混合処理工法、強固な地層まで鋼管杭を打ち込む鋼管杭工法など、地盤の状況や建物の規模に応じたさまざまな工法があります。

基礎工事の強化

地盤調査の結果に基づき、基礎構築をします。基礎の形式は、地盤の状況や建物の規模・構造によって選定されます。 比較的良好な地盤であれば、建物の底面全体を鉄筋コンクリートで覆う「べた基礎」や、柱の下のみに基礎を設ける「独立基礎」、壁の下に連続して設ける「布基礎」などの「直接基礎」が候補です。 一方、軟弱な地盤や液状化のリスクがある地盤、あるいは重い建物の場合は、建物の荷重を地中の強固な支持層まで伝える「杭基礎」が採用されます。

適切な接合方法の採用

接合は、骨組みとなる柱や梁などの構造部材を強固に繋ぎ、建物全体の耐震性を確保します。鉄骨造の自走式立体駐車場では、柱と梁、あるいはブレース(筋交い)などの部材同士を接合する方法として、主に高力ボルト接合や溶接接合が用いられます。 高力ボルト接合は、規定されたトルク値でボルトを締め付け、部材間に強い摩擦力を発生させて接合させる方式です。
溶接接合では、溶接技術者の技量や溶接条件の管理が品質を大きく左右します。近年では、耐震性能に優れた高力ボルトや、ロボット溶接などの技術も向上しており、 これらを適切に採用するのも一つの方法です。また、地震のエネルギーを吸収したり、部材の変形を許容したりするために、ブレースや耐震壁、耐震スリットを適切に配置することも、 地震力を効果的に分散させるうえで重要です。

厳格な品質管理

設計図通りの品質基準を満たした建設かを確認・保証するため、全工程にわたる品質管理が不可欠です。 使用する材料の品質が、JIS規格などの基準を満たしているか、施工方法や手順が規定通りに行われているか、寸法や精度が許容範囲内に収まっているか、などをチェックします。
基礎工事では配筋検査、鉄骨工事では建て方精度検査やボルトの締め付け確認、溶接部の検査、コンクリート工事では打設前の型枠検査や打設後の強度確認などが行われます。 これらの社内検査に加え、客観的な評価を得るために、第三者機関による検査(配筋検査や溶接部の非破壊検査など)の実施も、品質保証の信頼性を高めるうえで有効です。 ほかにも工事中の騒音や振動、粉塵など、周辺環境への配慮も品質管理の一環として取り組みましょう。

自走式立体駐車場についてはstageWにお任せください

自走式立体駐車場についてはstageWにお任せください

地震大国である日本において、自走式立体駐車場の耐震性能は、利用者や車両の安全を守るためには重要な要素です。 旧耐震基準と新耐震基準、そして2000年基準の違いを理解し、地震に負けない駐車場づくりに取り組みましょう。

私たちStageWは、長年にわたり培ってきた豊富な経験と確かな技術力で、お客様のニーズに合わせた最適な自走式立体駐車場の設計・施工をご提案いたします。 耐震性はもちろんのこと、利便性や経済性、周辺環境との調和にも配慮し、お客様にご満足いただける駐車場づくりをお手伝いします。
自走式立体駐車場に関するあらゆるご相談を承っており、土地活用の方法から具体的な計画、費用に関するご相談まで、専門のスタッフが丁寧に対応いたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。


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