自走式立体駐車場建設に関する建築基準法とは?規定や条例についても解説

自走式立体駐車場の建設の際には、建築基準法に関する知識が不可欠です。
しかし、さまざまな細かい規定があり、必要な知識を網羅するのは大変ですよね。
この記事では、自走式立体駐車場の建設に関わる建築基準法の規定や、その他の規定および条例について解説します。
自走式立体駐車場の建設を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

自走式立体駐車場に関する建築基準法とは?

自走式立体駐車場に関する建築基準法とは?

自走式立体駐車場の建設に関係する建築基準法について、次の3つのポイントにまとめました。

・建築基準法は国民の生命・健康・財産の保護のための法律
・制度規定と実体規定
・単体規定と集団規定

順に見ていきましょう。

建築基準法は国民の生命・健康・財産の保護のための法律

建築物は、建築基準法・建築基準法施行令・建築基準法施行規則・国土交通省告示などで建築基準が示されています。そのうちの建築基準法は、1950年に制定されたおおもとになる法律です。 その目的は「国民の生命・健康・財産の保護・公共の福祉の増進」です。建築物に該当する駐車場は、建築基準法を遵守しなければなりません。

その根拠として、建築基準法第一条に次のように定められています。

引用:(目的)
第一条 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。
建築基準法第一章第一条より

建築基準法をもとに、さまざまな施行令や施行規則が制定されているため、内容をしっかり押さえておきましょう。

制度規定と実体規定

建築基準法は、「制度規定」と「実体規定」の2つから構成されています。
制度規定は手続きや罰則に関する規定で、第1章および第3章の2から第7章に規定されています。 実体規定は、全国で適用される「単体規制」と都市計画や区域に適用される「集団規定」から構成されています。建築基準法の第2章と第3章が関係しています。詳しくは次で解説しましょう。

単体規定と集団規定

実体規定は「単体規定」と「集団規定」に分けられます。

・単体規定:全国どこでも適用される規定
・集団規定:都市計画区域・準都市計画区域に限り適用される規定

それぞれの特徴を見ていきましょう。

全国で適用される単体規定

単体規定は、全国で適用されており、建物の構造や耐震性、防火体制、避難設備、衛生設備などの安全や性能に関する基準が定められています。 建物単体で、恒久的に安全で機能的に保てるための最低限度の構造に関わるものです。
例えば、自然災害から守るための耐震性についての基準や、人命・健康・財産を守るための基準などがあります。 具体的には、採光・換気設備・窓の大きさ・トイレ・防火・耐震・屋根・外壁・電気設備・避難経路・避難階段・排煙設備・防火区画・非常用エレベーター・防災救急用設備などです。
これらは、日本国内すべての地域に適用されるため、地域によって建物の基準が変わることはありません。

都市計画で適用される集団規定

集団規定は、市街地の環境整備などを目的とする規定です。都市計画や準都市計画区内域で適用されています。 具体的な内容としては、敷地や道路に関する基準・建蔽率・容積率・高さ制限・各種斜線制限・防火地域についてです。
集団規定の対象となる都市計画区域は、日本の面積の約26%を占めており、その面積の中に人口の約93%が居住しています。そのため、建築物のほとんどが都市計画区域内といえるでしょう。 そのほかにも、実体規定が守られているか調べるための検査の手続きや仕組み、違反した場合の罰則なども規定されています。

自走式立体駐車場建設には建築基準関係規定も重要

自走式立体駐車場建設には建築基準関係規定も重要

建築基準法第六条で定められている建築基準関係規定には、法律の遵守を確認するための詳細な規則が定められています。それが次のとおりです。

・建築基準法第六条の規定
・自走式立体駐車場に関するおもな規定
・バリアフリー法や都市緑地法も関係

順に見ていきましょう。

建築基準法第六条の規定

第6条は、建築物の建築確認に関する法律です。着工前に申請・確認が必要な建物の基準について定めています。対象となる建物の主な規模は次のとおりです。
※大規模建築物に関する条件

木造建築物2階以上、延べ面積500平方メートル以上
高さ13メートルもしくは軒の高さが9メートル以上
木造以外3階以上、延べ床面積200平方メートル以上

また、時間貸し駐車場であれば、市区町村役場への届け出が必要です。根拠となるのは以下の内容です(建築基準法第6条から抜粋)。

当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。 以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。
引用:建築基準法第6条

自走式立体駐車場に関係するおもな規定

建築基準法施行令第9条によれば、16項目の関連法令があります。一般的には、確認申請を提出する自治体の条例に従うため、関連法令をチェックしましょう。
主要な建築基準関係規定には次のようなものがあります。

消防法消防設備の設置や点検の義務
駐車場法路上駐車場や路外駐車場についての細かい規定
都市計画法開発行為の許可、開発許可を受けた土地における建築等の制限
屋外広告物法広告物等の制限
水道法給水装置の構造及び材質
下水道法排水設備の設置等
都市下水路に接続する特定排水施設の構造

ほかにも、駐輪場を併設するのであれば「 自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」なども関係してくるでしょう。

都市緑地法やバリアフリー法も関係

建築基準法施行令第9条には含まれていませんが、次の3つも関連があるため、押さえておきましょう。

都市緑地法・「用途地域が指定されている区域内」で「良好な都市環境の形成に必要な緑地が不足し、建築物の敷地内において緑化を推進する必要がある区域」が対象
・敷地面積が原則1,000平方メートル以上の建築物の新築または増築が対象
・詳細な規定は、各自治体の緑化条例の確認が必要
建築物省エネ法・建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律
・適応外だが太陽光パネルを設置する駐車場も増えている
バリアフリー法・高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律

自走式立体駐車場と緑地化の関連は、景観との調和やヒートアイランド現象の緩和、企業イメージアップなどの効果から重要度を増しています。 とくに都市部では壁面や屋上を緑地化するなど、積極的に取り組む企業も増えているようです。

駐車場の緑地化に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
駐車場緑化のメリットを紹介!効果・導入事例・助成金も詳しく解説

自走式立体駐車場に関して駐車場法で定められていること

自走式立体駐車場に関して駐車場法で定められていること

駐車場法では、自走式立体駐車場の建設に際して、幅や高さなどが細かく規定されています。主な項目は次のとおりです。

・適用の範囲
・出入口の基準
・防火や照明
・車路の幅員

順に見ていきましょう。

適用の範囲

適用の範囲については、駐車場法第11条に次のように規定されています。 「路外駐車場で自動車の駐車の用に供する部分の面積が500平方メートル以上であるものに適用する」 さらに駐車場法第12条には、第11条を満たした路外駐車場で駐車料金を徴収するものは、 あらかじめ都道府県知事に位置、規模、構造、設備、その他必要事項を届け出るよう明記されています。届け出た事項を変更する場合も同様です。

出入口の基準

駐車場法施行令の第7条 では、出入口に関する基準が定められています。例えば以下の部分に出入口を設置してはいけません。

・駐停車禁止区間
・横断歩道の昇降口から5メートル以内
・幼稚園や小学校、公園など児童が出入りする施設の出入り口から20メートル以内
・橋
・車幅が6メートル未満の道路
・縦断勾配が10%以上の道路

また、駐車場法施行令の第9条 では、安全に走行できるよう車路の幅やはり下の高さを定めています。例えば、はり下の高さは、車路で2.3メートル以上、車路を除いた駐車スペースで2.1メートル以上です。

防火・換気装置・照明

駐車場内に設置される防火区画、換気装置、照明装置、警報装置については、駐車場法施行令第11条から14条に定められています。

防火区画(第11条)建築物の横に建設する場合は特定防火設備によって区画すること
換気装置(第12条)内部の空気を床面積1平方メートルにつき14立方メートル/時間以上直接外気と交換できる換気装置を設置すること
照明装置(第13条)車路10ルックス以上、駐車部分2ルックス以上の照明装置を設置すること
警報装置(第14条)必要な警報装置を設けること
規定にない特殊な装置を設置したい場合は、国土交通大臣の許可が必要です。

車路の幅員

駐車場法施行令第8条 には、車路の幅員を5.5メートル以上(一方通行なら3.5メートル以上)と定めています。ただし各都道府県において、 駐車場法や駐車場法施行令をもとに細かい条例を制定しているため、最終的な確認は駐車場を設置する都道府県の条例を確認しましょう。

その他の制限

その他の制限

そのほかにも制限はさまざまありますが、ここでは用途別階層制限と工法による制限の違いについて解説します。

・建築基準法による用途地域別階層制限
・認定工法と在来工法

順に見ていきましょう。

建築基準法による用途地域別階層制限

駐車場を建設する際には、建築予定地の用途の確認が重要です。これは、地域により建設階層の制限があるためです。用途地域とは、建築予定地が住宅専用地域なのか、商業地もしくは工業地域なのかなど、都市計画法に基づいて分けられています。

用途地域独立駐車場ビルや商業施設附属の駐車場
第1種・第2種低層住居専用地域建築不可・床面積の合計が600平方メートル以内
・自動車の車庫部分を除いた建物の延べ面積以内かつ1階以下
第1種・第2種中高層住居専用地域床面積300平方メートル以内2階以下の場合可・床面積の合計が3,000平方メートル以内
・自動車の車庫部分を覗いた建物の延面積以内かつ2階以下
第1種・第2種住居専用地域床面積300平方メートル以内2階以下の場合可・床面積が自動車の車庫部分を除いた建物の延べ面積以内かつ2階以下
そのほか制限なし制限なし
独立駐車場において、都市計画されたものは面積制限の特例もあります。また、その他に含まれるのは、第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域です。法令の範囲内であれば、規模や階数の制限はありません。

認定工法と在来工法

自走式立体駐車場には、国土交通大臣認定工法と一般在来工法の2つがあります。認定工法であれば、防災設備の緩和や工事期間の短縮などのメリットも多いためおすすめです。 一方、一般在来工法は自由な設計ができ地下駐車場にも対応できます。

国土交通大臣認定工法一般在来工法
最大規模6層7段
(場合によっては8層9段)
制限なし
(法令の範囲内にて)
特徴・防災設備の緩和がある(防火区画、耐火被覆の免除)
・建築確認申請の迅速化
・工事期間の短縮
(結果的に工事費の削減)
・地下駐車場不可
・自由設計
・地下駐車場も対応可能
・防災設備の緩和なし(防火区画、耐火被覆)

認定駐車場については、こちらの記事で詳しく解説しています。参考にしてください。
自走式立体駐車場の認定駐車場とは?建設メリット5選|認定の種類・特長も詳しく解説

自走式立体駐車場建設は建築基準法を厳守!専門家にお任せを

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この記事では、自走式立体駐車場の建設にとって重要な建築基準法および関連法律や条例などについて詳しく説明しました。このように立体駐車場建設のためには、法的な知識が必要です。 もし、自走式立体駐車場の建設を検討しているのであれば、建築基準法をはじめ、さまざまな法知識や事例を熟知したメーカーに依頼するのがおすすめです。

stageWは、国土交通大臣認定の自走式立体駐車場メーカーとして、長年の実績と信頼を誇ります。多くの事例を手掛けているため、お客様のニーズにあわせた提案も可能。 ぜひお気軽にお問い合わせください。

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