立体駐車場の種類・仕組み・コスト|災害時利用や環境対策も解説

立体駐車場には、大きく分けて機械式と自走式があります。
立体駐車場の建設を検討している事業主様にとっては、どのタイプの駐車場が自社の事業に適しているか気になるところでしょう。
この記事では、立体駐車場の種類・仕組み・コストについて徹底解説します。
また比較対象として平面式駐車場についても紹介し、それぞれの違いやメリット・デメリットについてまとめました。
災害時利用や環境対策としての駐車場経営についても紹介しているので、参考にしてください。

立体駐車場の種類と仕組み

立体駐車場の種類と仕組み

立体駐車場の種類と仕組みについて解説します。3種類の駐車場の概要をつかむ参考にしてください。比較対象として平面式駐車場についても解説します。

平面式駐車場

平面式駐車場は、アスファルト舗装にライン引きしたものを指します。
小規模なものであれば、砂利敷きにロープでライン引きした簡易的な実装でも十分機能を果たせます。
規模の大きな平面駐車場は、郊外の大規模スーパーや商業施設、パチンコ店などでも設置されており、駐車料金が無料であるケースも少なくありません。
都市部では小規模コインパーキングとして活用でき、狭小地を有効活用するのに適しています。

機械式立体駐車場

パレットと呼ばれる台に駐車し、機械によって自動収納されるタイプの駐車場です。都市部など駐車面積の確保が難しい場所に有効といえます。機械式立体駐車場のなかにも、さまざまな種類があり、以下の3種に分類されます。

● 二段式・ピット二段式
● パズル式
● 昇降式・エレベーター式

機械式立体駐車場については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
関連記事:機械式駐車場とは?メリット・デメリットから分かる設置の基本と注意点を解説!

二段式・ピット二段式

車を上下段に収容できるのが二段式駐車場です。おもな特徴は表のとおりです。

二段式● 地上に設置されており、車を上下2台停められる
● 個人宅にも利用可能
● 上段に駐車できれば盗難の懸念が減る
ピット二段式● 地下と地上の二段式
● 地上に停めておけば機械による出し入れ不要
● 地下への収容は、いたずらや盗難の心配が少ない
● 水害時には車が水没する可能性もある

機械式立体駐車場のなかでは、一番シンプルな構造で、操作も単純です。ただし、地上の駐車は雨風や紫外線にさらされるため、車体やタイヤの傷みが早まるといったデメリットがあります。

パズル式立体駐車場

パズル式立体駐車場は、昇降横行式ともよばれています。一台分の空きスペースがあり、パレットをパズルのように動かして車を出し入れする仕組みです。 3段以上でオートメーション化されているため、定位置に駐車したあとはボタンを押すだけで簡単に入庫でき、都市部のビルやマンションなどで多く導入されています。

パズル式立体駐車場については、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
関連記事:パズル式立体駐車場とは?メリットとデメリットについて解説

昇降式・エレベーター式

大規模な設備による機械式駐車場が昇降式やエレベーター式です。それぞれの特徴は次のとおりです。

昇降式車を載せるパレットを垂直方向に循環させて車を出入口まで移動させる
エレベーター式車を納めるスペースまでエレベーターで上げ、左右どちらかの駐車室に収容する

どちらも都市部のオフィスビルやマンションなどで利用されています。エレベーター設備の構築・保守をおこなっている会社が請け負っているケースが多く、駐車場というよりも大規模機械設備という認識のほうが近いかもしれません。別名タワーパーキングともいわれています。

エレベーター式駐車場については、こちらの記事で詳しく解説しています。参考にしてください。
関連記事:エレベーター式駐車場の特徴を解説!設置がおすすめ・不向きのケースも紹介

自走式立体駐車場

自走式立体駐車場は、その名のとおり「自ら運転」し、スロープを利用して上の階へと上がっていきます。運転者は自分で見つけた駐車スペースに、自分で駐車します。 下から順に上がっていくので、空きスペースを見つけやすいのがメリットです。大規模商業施設や公共施設の附帯駐車場として、よく利用されています。

自走式立体駐車場にも、次のようにさまざまなタイプがあります。

● フラットタイプ
● スキップタイプ
● 連続傾斜タイプ

フラットタイプ

駐車スペースが平ら(フラット)で、スロープを利用して上の階へ移動するタイプの駐車場です。階ごとに駐車できる台数が多く、車路を移動しながら駐車スペースを探す必要があります。 一方通行で計画することも可能なため、行き来の混乱はありませんが、混雑時は駐車スペースを探す手間がかかるかもしれません。 大規模な駐車場建設が可能で、敷地面積が十分確保できる際に有効です。

フラットタイプの施工事例については、こちらで紹介しています。
関連記事:フラットタイプ(商業施設)施工事例

スキップタイプ

駐車スペースが半層ずつ段違いで作られているため、スロープ部分が短く、移動しやすいのが特徴です。駐車スペースは平らなため駐車しやすく、移動距離も少なく済みます。 また、フラットタイプに比べ外周部にスロープを設置しないため、それほど広い敷地でなくても、効率よく駐車スペースを確保できます。

連続傾床タイプ

床面全体が緩やかに傾斜しており、1階から最上階までらせん状につながっているタイプです。緩やかな坂道が連続しており、登りながら空きスペースを効率よく探せます。 こちらもスキップタイプ同様、外周部にスロープを設置しないため、それほど広い敷地でなくても効率よく駐車スペースを確保できます。

立体駐車場のメリット・デメリット

立体駐車場のメリット・デメリット

各タイプの駐車場には、メリット・デメリットがあります。それぞれについて解説するので参考にしてください。

平面式駐車場

平面式駐車場についてのメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット

● 初期費用が安い
● メンテナンス費用が安い
● 車高や重量の制限がない
● 荷物の出し入れが簡単

平面式駐車場は、アスファルト敷きとライン引き、精算機とゲートの設置だけでよいため、初期費用が安く済みます。 また、メンテナンスもアスファルトやラインの保守程度で済むため、ランニングコストがあまりかかりません。 車種の制限がほぼなく、大型車やハイルーフ車でも問題なく駐車できます。荷物の出し入れのために移動する必要もなく、バックドアの開閉も比較的自由です。

デメリット

● 屋根がないため車へのダメージを受けやすい
● 広い面積がない都市部では大きな駐車場設置が難しい
● セキュリティ面に不安がある

屋根がないため、紫外線・雨風・鳥の糞・黄砂などの外的要因から車体にダメージを受ける可能性があるのがデメリットです。また、誰でも出入りできることからセキュリティ面にも不安があります。 土地面積と駐車可能台数がイコールのため、駐車台数を確保するためには広い敷地が必要です。そのため、都市部で大規模平面駐車場を設けるのは難しいといえます。

関連記事:平面式駐車場について解説!立体駐車場と比較したメリット・デメリットとは

機械式立体駐車場

平面式駐車場についてのメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット

● 車同士の接触リスクが低い
● 知らない間の当て逃げやいたずらの心配がない
● 盗難や車上荒らしのリスクが低い
● 限られた敷地面積で効率よく駐車できる

駐車スペース(パレット)には、外部からは立ち入れないため、収容後に車を傷つけられる可能性は少なく、セキュリティ面に優れています。 車を移動させる車路が不要なため、敷地面積に対する利用効率は最もよいといえます。

デメリット

● 故障時は修理が完了するまで使用できない
● 停電時には利用できない
● 混雑時には出庫まで時間がかかる
● メンテナンスの手間と費用がかかる
● 車高や車幅の制限がある

車高や車幅の利用制限が多く、サイズが大きい車種などは駐車できないケースが多いのがデメリットです。出庫する時間は数分ですが、混雑時には待ち時間が発生します。 故障や停電時には動かなくなるだけでなく、災害に弱いといった面もあります。 また、保守・メンテナンスの手間とコストがかかるため、売上計画を十分に検討する必要があるでしょう。

関連記事:マンションに機械式立体駐車場を設置するメリット・デメリット|建て替え時の注意も解説

自走式立体駐車場

自走式立体駐車場のメリット・デメリットは次のとおりです。

メリット

● 駐車が容易
● 荷物の出し入れが簡単
● 屋根があるため濡れる心配がない
● 直射日光や雨風から車両を保護できる
● 車高の高い車でも駐車できる
● メンテナンスの負荷は大きくない

屋根や壁があるため悪天候でもストレスなく乗り降りできるのが大きなメリットです。また、車体を紫外線や雨風にさらさずに済みます。 乗降や荷物の出し入れ、駐車は平面式駐車場と同様に容易です。メンテナンスもエレベーターの保守点検以外は、それほど負荷が大きくありません。

デメリット

● 初期費用がかかる
● 広い土地が必要

自走式立体駐車場の場合、規模が大きい設備のケースが多いため、一定の初期費用がかかります。広い土地が確保しにくい都心部の場合、新たに建設するのは難しいかもしれません。

立体駐車場のコストとメンテナンス

立体駐車場のコストとメンテナンス

それぞれの駐車場に必要なコストとメンテナンスについて解説します。どの駐車場も、それぞれコストとメンテナンスにおいて、メリットとデメリットがあるので参考にしてください。

平面式駐車場

駐車場の中で、設置コスト・ランニングコストともに最も安いのが平面式駐車場です。砂利敷きにロープでライン引きでも運営可能なため、初期費用が少なく済みます。 土地の上に建物がないため、ほかの施設に転用も容易です。
メンテナンスは、アスファルト舗装やラインの保守や出入口のゲートの点検だけで済みます。ただし、土地の広さ=駐車台数のため経営効率は悪いうえ、 経営効率の良し悪しは土地代によるところが大きいでしょう。

機械式立体駐車場

都市部で限られた面積で駐車スペースを提供するのに適しているのが機械式立体駐車場です。しかし、機械設備のため定期的なメンテナンスが欠かせません。 1か月~数か月ごとに定期検査をおこなう必要があり、部品の定期交換など事前保全の手間もかかります。法定耐用年数が15年のため、 設置後15~20年で大規模なリニューアルを行う際には1台あたり100万円程の費用がかかります。

関連記事:機械式立体駐車場の維持費は高い?リニューアル費用の見積もりが重要な理由

自走式立体駐車場

鉄筋コンクリート造のため、初期設置費用がかかります。ある程度広い土地を確保する必要があるため、土地代も考慮する必要があるでしょう。 メンテナンスに関しては、機械式立体駐車場ほど手間とコストはかかりません。国土交通大臣認定の駐車場であれば、耐火に優れており、メンテナンスコストも安く済みます。

立体駐車場経営における災害時の注意点

立体駐車場経営における災害時の注意点

立体駐車場における災害時の対応や注意点について解説します。災害時に駐車場を利用できるケースも紹介するので参考にしてください。

平面式駐車場

広くて開けた場所のため、地震の場合は上からの落下や建物の倒壊を避けられます。被災時に車中泊や救援物資の配給場所などで利用できるため、避難場所としても有効です。

機械式立体駐車場

水害の際、地下ピット式だと車が水没する可能性があります。台風前には近隣の高台や自走式立体駐車場へ避難させるなどの予防策が必要です。 停電時も動かなくなるため、機械式立体駐車場は災害時には事前対策が重要です。

自走式立体駐車場

津波や地震にも強く、災害時には避難場所に利用できます。屋根があるため、悪天候時でも安心です。 布や段ボールなどで壁を作れば、簡易的な個室としてスペースを区切ることもできます。

自走式立体駐車場の環境対策や災害時利用

立体駐車場経営における災害時の注意点

前述のように、自走式立体駐車場は災害時に強く、避難場所としても有効活用できます。加えて以下のような強みがあります。

●都市緑化に貢献
●災害時避難所として利用可能

都市緑化に貢献

土地緑化法は、都市部の健康的な環境づくりに貢献を促す法律です。 緑が不足している市街地では、一定規模以上の建築物の新築や増築する際に敷地面積の一定割合以上の緑化を義務付けています。(都市緑地法第34条

条件を満たした場合は、建築時に助成金を申請可能です。植栽などの支援対象工事費の1/2を補助金で補えます。国土交通省の報告によれば、平成30年の時点で緑化地域制度を導入している自治体は以下の4都市です。

● 名古屋市
● 横浜市
● 世田谷区
● 豊田市

駐車場の壁面や建物周辺の植栽、屋上の公園化など、制度を利用して都市緑化に貢献しています。
参照:国土交通省|緑化地域制度導入の手引き

関連記事:駐車場緑化のメリットを解説!効果・導入事例・助成金も紹介

災害時避難所として利用可能

津波や暴風雨にも強い構造のため、防災機能型駐車場として地域社会へ貢献できます。停電でエレベーターが使用できない場合でも、スロープを利用して上の階へ行けるため、車いすでの避難も可能です。
また、支援物資の配送拠点や仕分け作業場として利用可能です。広い車室に簡易な壁を設ければ、臨時の仮設住宅に転用できる場合もあります。 太陽光パネルを設置しておけば、停電時も電源の確保ができ、救援活動に貢献できるでしょう。災害用のトイレ設置やバリアフリー構造などの対策しておけば、災害時にも地域の幅広い人に利用してもらえます。

関連記事:立体駐車場で太陽光パネルを設置するメリット5選!補助金についても詳しく解説

自走式立体駐車場建設ならstageWにお任せください

自走式立体駐車場建設ならstageWにお任せください

立体駐車場には、それぞれのメリットとデメリットがあり、どの種類が優れているというものではありません。 そのうち自走式立体駐車場は、多くのメリットがあり、長期的には地域社会に貢献できるポテンシャルも兼ね備えています。

自走式立体駐車場の建設を検討している方は、ぜひ国土交通大臣認定のstageWを検討ください。お問い合わせでは、ご予算・ご希望台数・仕上げ・納期などのご要望をお聞かせください。 長年の実績により、お客様のご要望に合わせた提案を致します。


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